原油次第で目標達成後ずれ、2%目指し政府とそごない=日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は15日の金融政策決定会合後の会見で、
原油価格が日銀の想定から大幅に下振れているため、
2016年度前半としている2%の物価目標達成時期が
後ずれする可能性を事実上認めた。

安倍晋三首相は物価に影響が大きい携帯電話料金の
引き下げを指示したが、2%目標の達成をめぐり政府と
日銀にそごはないとの見解を示した。

日銀は物価見通しを作る上で、原油価格がドバイベースで
バレル60ドルから2017年度末にかけて70ドルに
上昇するのを前提にしている。

しかし、原油価格は足元45ドルにとどまっており、
市場では日銀シナリオの達成は不可能とみられている。

黒田総裁は「原油の動向次第では達成時期が前後する」と発言、
原油の低価格が継続すれば2%の達成時期は後ずれすることを示唆した。

追加緩和の必要性を問われると、現行の年間80兆円の
国債買い入れを柱とした量的・質的緩和が「所期の効果を
発揮している」として否定。

「輸出・生産面に新興国経済の減速の影響が見られるが、
企業・家計で所得から支出への前向きのメカニズムが
働いている」と説明した。

日銀が政策運営の目安としている消費者物価指数は、
生鮮を除くコアCPIが7月は前年比ゼロ%に
とどまっているが、生鮮及びエネルギーを除いた指数や、
食品・日用品の日次指数が上昇しており「物価の基調は
上昇している」と強調した。

企業や家計の物価観である予想物価上昇率
「全体としては上昇している」と説明。

国債市場から試算されるブレーク・イーブン・インフレ率
(BEI)は低下しているが、アンケート調査による企業の
物価見通しや企業の値上げ行動などが順調であることを
根拠として挙げた。

また、「為替が円安になれば物価が
上がるとは言い切れない」と指摘。

1ドル120円程度の「現状水準が続いても物価が
上がらなくなることはない」との見解を示した。

同時に、今後「物価の基調に変化があれば、政策を
躊躇なく調整する考えに全く変わりはない」として、
追加緩和を辞さない姿勢を改めて繰り返した。

携帯電話の通話料金引き下げについては「携帯料金の
CPIに占める割合が上昇しているのは事実」としつつ、
政府との間で2%の物価目標の早期達成をめぐり
「全くそごを来しているということはない」と強調。

「携帯料金が下がり可処分所得
上がれば支出が増える」と指摘した。

中国経済について、「足元、製造業を中心に減速しているのは
事実」としつつ「当局の財政・金融政策で先行き概ね安定した
成長経路をたどる」との従来見解を堅持した。

日銀は今会合で輸出と生産の現状判断を下方修正したが、
中国経済が安定的な成長を続けるもとで輸出も安定的な
成長を続ける」と期待した。

米利上げをめぐり、「仮にいつかの時点で利上げを
実施するならば、米国が米経済回復に確信を
持ったことの表れで、米経済がより力強く
回復すれば世界経済ひいては日本経済に
プラスとの考えに変わりはない」との見解を示した。

米利上げによる新興国からの資金流出が懸念されているが、
「最近の新興国の議論を聞くと、そのような懸念は
弱まっている」とし、理由として「外貨準備などで
耐性ができている」と説明した。

今会合では輸出と生産の現状判断を
それぞれ下方修正した。

市場では7〜9月の国内総生産GDP)が輸出・生産の
下振れで2四半期連続のマイナスに陥るとの懸念も
聞かれるが、総裁は「8月のデータはまだ出ていない。
予測は難しいが7〜9月はプラスに戻っても
おかしくない」との見通しを示した。

企業は「全規模全産業で既往最高水準の収益状況を
実現している」とし、「投資スタンスは非常に強い」
と指摘した。

新興国経済減速の影響を懸念する企業もあるが、
投資計画は全体としてしっかりしている」と強調した。