台湾「独立派」勝利で、気になる中台関係

台湾の総統選は16日投開票され、野党、
民主進歩党蔡英文主席(59)が、
与党、中国国民党朱立倫主席(54)ら
2候補を得票率56%の大差で破り
勝利しました。

女性総統の誕生は史上初めて、
就任式は5月20日に行われ、
総統選挙が直接投票制に移行した
1996年以来、3度目の政権交代
実現する。

民進党政権の誕生は、陳水扁政権
(2000〜2008年)以来8年ぶり2度目。

総統選では、国民党の馬英九政権が
2期にわたり進めた中国との融和政策が
焦点となりました。

蔡氏は中台関係の「現状維持」を訴え、
馬政権路線の継続を掲げる朱氏を
終始引き離した。

馬政権下では台湾経済の対中依存度が高まり、
有権者の間に台湾が中国にのみ込まれるとの
不安が強まる一方、富の配分が富裕層に偏り
格差が広がったとの批判も加わり、独立志向の
強い民進党が2014年末の統一地方選大勝の
余勢を駆って選挙戦を有利に展開しました。

中国の習近平国家主席は昨年11月、馬総統と
1949年の分断後初の中台首脳会談を実施する一方で、
「一つの中国」原則を中台間で確認したとされる
「1992年コンセンサス」を認めない民進党との
対話は拒否してきました。

中国の国務院台湾事務弁公室は16日深夜、
台湾総統選の結果を受けて談話を発表、
「我々の対台湾政策は一貫して明確で、
選挙結果で変化はしない。これからも
『1992年合意』を堅持し、いかなる形式の
『台湾独立』分裂活動にも断固として
反対する」と、名指しは避けながらも、
当選した 蔡英文氏をけん制しています。

一方、台湾中央選管の最終結果によると、
立法院(国会、定数113)選挙(小選挙区
比例代表並立制)では、民進党
現有40議席から68議席に躍進し、
悲願である初の単独過半数
確保しました。

国民党は64議席から
35議席と大幅に数を減らした。

民進党陳水扁政権(2000〜2008年)で、
国民党など野党に立法院の多数を握られる
「ねじれ現象」で重要法案通過を阻まれ、
政権を掌握しても議会運営に支障を
きたしました。

また、今回の選挙では、長年続いてきた
国民党、民進党の2大政党に対し「第3勢力」と
呼ばれる新政党が存在感を示したのも
大きな特徴。

学生運動参加者らが結党した新政党
「時代力量」は初参戦ながら5議席
確保しましたが、李登輝元総統を
精神的指導者に仰ぐ台湾団結連盟
(現有3議席)は議席を失いました。

2014年春の対中経済協定に反発した
学生運動を経て「公民意識」が社会に
広がり、多くの学生や社会運動団体が
政党を結成して政治に参加し始めています。

時代力量は1987年の戒厳令解除後に
生まれた若者らが多く、民進党よりも
独立志向が強いとされています。

国民党の馬英九政権の対中融和路線に
反対する立場が一致した民進党
時代力量は、一部選挙区で選挙協力しました。

これまで、大きな動きがなかった
中台関係が、中国からの独立を志向する、
あるいは馬体制が進めてきた
中台融和路線から一歩距離を置く、
蔡英文総統体制が誕生することで、
中国からの台湾に対する圧力が
強まることで、その行方が
注目されます。

馬体制では、「一つの中国」に対する
コンセンサスが強まり、先行きは台湾は
「一つの中国」に名実ともに編入される
との思惑も出ていました。

もちろん、中国は、今は台湾の存在を
認めていますが、将来的には香港との
関係を志向すると思われます。

馬体制下では、話し合いで進められるのでは
ないかと思われましたが、蔡英文総統体制下では、
武力で「一つの中国」を実現する可能性もあります。

中国は、早々に反中国の姿勢に対し、
釘を刺しています。

世界中が様々な問題で混沌としていますが、
これに中台関係が加わる可能性が
強まっていることで、東アジアの緊張が
一段と強まる可能性が出て来ました。