為替相場、反保護主義削除で動揺も

今週の為替相場は、ドイツで開催されていた20カ国財務相中央銀行総裁会議(G20)で、
保護主義の文言が削除されたことをどのように受け止めるのかが注目されることに
なりそうです。

市場が注目していた貿易分野に関しては、従来G20が表明してきた「保護主義への対抗」という
文言を声明に盛り込めず、反保護主義自由貿易推進の方針を打ち出すことが出来ませんでした。

為替については、通貨安競争を回避するとしたG20合意を再確認しましたが、
保護主義と通貨安競争回避が国際金融市場にとっては大きな安心感を
与えて来ただけに、両輪がなくなってしまったことに対する漠とした
不安が高まる可能性があると思います。

国際社会は、米国の一国優先主義に反発を感じています。

これまで、米国を中心に粘り強く、「反保護主義」を醸成し、それなりの効果を
あげて来ましたが、米国が「反保護主義」の旗を降ろしたことで、新たな
国際ルールの枠組み作りが必要になりました。

世界一の強国の米国が保護主義を標榜したことで、世界の秩序がどうなるのか、
不透明感が増してきただけに、金融市場も安閑とはしていられないと思います。

唯一、通貨安競争回避が共通認識となっていますが、「通貨」だけを目標にしても、
安定することは難しいと思います。

これまで、国際社会が培ってきた「反保護主義」の流れが継続しない限り、
「通貨」を人質にして、強引な保護主義策を米国が採ると考えています。

「反保護主義」の文言が削除されたことで、米国としては、米国第一の政策を
打ち出す可能性があります。

その場合には、米国の貿易赤字を解消するために、「ドル安」を
強化することも考えられます。

今回のG20は、米国は規制に縛られない唯一の国になったということです。

それがいつまで続くのか、分かりませんが、トランプ大統領
その職にある限りは米国だけが国際競争で勝利者となる道を
歩んでいくものと考えています。

米国の横暴を抑制するには、欧州、アジア、中南米、アフリカが
一丸となって米国に対抗する勢力にならないといけないと思いますが、
それにも時間がかかると思います。

まずは、最初の国際金融会議で、トランプ米政権が存在感を見せつけたということです。

為替市場では、今まで以上に、トランプ米政権の意向を受けた動きをする可能性が出てきました。

となると、トランプ米政権がドル高を望んでいるのか、
ドル安を望んでいるのか、それ次第で市場が上下する
おかしなことになってしまいます。

そのきっかけを今回のG20は与えたということで、歴史的なものになったようです。

実際の市場は、米国があと二回の利上げに含みを持たせたものの、
あと三回の利上げもあり得るとみていた予想が遠退いたとの見方が
広がったことで、ややドルが軟調な動きを見せています。

この流れが加速するとは考えにくいのですが、国際秩序に変化が
出る可能性を先取りした場合には思わぬドル安が進むことには
注意が必要だと思います。

気掛かりなのは、日本の政治状況です。

森友学園問題、自衛隊の日報問題、文部科学省天下り問題等々、
政権の継続に関わる問題が山積しています。

安部首相の強い指導力に変化はあるとは思わないのですが、
第一次安部政権で、あっけなく政権を投げ出したことがあるだけに、
その行方には注意が必要だと思います。

万が一の場合には、円が急落する可能性があることに留意したいと思います。

予想レンジは、
ドル円が108.20〜114.20円、
ユーロ円が118.20〜124.20円、
英ポンド円が136.20〜142.20円、
ドル円が83.20〜89.20円。