欧州銀のドル調達上乗せ金利が急拡大、危機の伝播が背景

一部の欧州銀がドルを調達する際に要求される上乗せ金利
「ユーロ・プレミアム」が急拡大している。

同プレミアムはこの日50ベーシスポイント(bp)を上回り、
月初の24bpから2倍以上の水準に達した。

ギリシャ発の欧州ソブリン危機が、イタリアやスペインへ
一気に伝播したことが背景だが、危機収束のメドが立たないなか、
ユーロ・プレミアムが常態化し、金融機関の財務体力に
悪影響を及ぼす懸念もでてきた。

「ユーロ・プレミアム」は、1990年代後半の日本の金融危機時に、
邦銀がドル調達をする際、要求された上乗せ金利
ジャパン・プレミアム」の欧州銀版。

ジャパン・プレミアムは当時最大で
100bp程度まで拡大した。

ギリシャ債務危機を引き金とする信用リスクの拡大や
インターバンク取引の流動性低下により、ドル資金市場では
既に一部の欧州系金融機関が必要十分なドルを調達できなくなっている。

このため、これらの金融機関は、比較的に調達が容易な円や
ユーロをまず調達して、それらをドル資金に換える
為替スワップ取引を通じてドルの流動性を確保してきた。

こうした動きは6月末にいったん収束に向かったが、
前週、イタリアやスペインに危機が一気に伝播したことで、
「ユーロ・プレミアム」が再び拡大している。

欧州銀の旺盛なドル資金需要の本源について、
欧州系金融機関担当者は「過去の
ドル建てシンジケート・ローン等からくる
ドル・ファイナンスのニーズに加え、
サブプライム・ローンをベースにした
アセットの償却が完了していないケースもあるだろう」と指摘。

「そうしたアセットは、ゼロ・インカム・アセットで、
持ち続けるとファイナンス・コストばかりがかかる。
ただ、(金融危機時の)邦銀もそうだったように、
一気に償却する財務体力が無い、あるいは、
怠慢により償却が遅々として進まない
金融機関があるようだ」(同)という。

しかし、高いユーロ・プレミアムを継続的に支払えば、
一段と財務体力は衰えるという「負の循環」に陥りかねない。

ハーバード大学教授のローレンス・サマーズ氏は17日、
前週のイタリア市場急落で、欧州の金融危機は新たな、
一段と危険な局面に入った、との見解を示した。

「これまでは危機が周辺国と呼ばれる経済規模が
比較的小さい国々で発生していたので、欧州経済通貨同盟
(EMU)の目的や国際金融にシステミックな脅威を
及ぼすものではなかった。しかし今や、欧州の統合と
世界経済の双方が脅かされる事態となっている」と述べた。

為替スワップ取引では、ドル需要の一方的な高まりと
個別行の信用リスクを反映して、6月に入って
ユーロ・プレミアムが顕在化してきた。

ユーロ・プレミアムは、ドル/円スワップで顕著となり、
6月末には同プレミアムが40bp付近まで拡大。

しかし、7月に入って、同プレミアムはユーロ/ドルスワップ
一段と拡大する一方、ドル/円スワップでは拡大ペースが緩やかになっている。

「6月の段階では大手の独銀や仏銀が手持ちの円をドルに換えて、
ドルの流動性を確保する動きがみられた。

一方、イタリアやスペインの金融機関は、
もともと円の持ち合わせが少ないので、ドルを確保するために、
手持ちのユーロをドル転する必要がある」(外銀資金担当者)とされ、
ドル調達の主戦場はユーロ/ドルスワップに変化している。

ユーロ・プレミアムは、各通貨のLIBOR
ロンドン銀行間取引金利)が表す金利差が、
ユーロ/ドルフォワードのユーロ・ディスカウントや、
ドル/円フォワードのドル・ディスカウントから
計算される金利差からどれほどかい離しているかで算定される。

20日の気配では、1年物ユーロ/ドルのプレミアムが
50.88bpと月初の24.11bpから拡大、1年物ドル/円のプレミアムは
33.68bpと月初の24.35bpから小幅に拡大した。

ユーロ圏短期資金市場では、ユーロ圏債務問題の拡散懸念を背景に、
金融機関が手元流動性確保を急いでいるため、翌日物借り入れ金利
対する上昇圧力が続いている。

オーバーナイトのユーロ圏無担保翌日物平均金利(EONIA)は
今週、1.4%後半で高止まりしている。

市場参加者によると、流動性が機能するためには
EONIAが1%前後であることが望ましいとされるが、
債務問題に対する先行き不安から、準備預金の積み立てを
前倒しに行う金融機関が増えているという。