追加緩和には欧州問題の影響考慮、円高だけが要因でない=日銀総裁

日銀の白川方明総裁は27日、金融政策決定会合後の会見で、
資産買い入れ基金増額による追加緩和を決定した理由について、
円高だけが要因ではなく、欧州債務問題が日本経済に
与える影響も考慮したとし、「経済の下振れリスクを
より意識した方がいいと判断した」と述べた。

ユーロ圏首脳会議が危機対策で合意に至ったことについて、
財政と金融・実体経済の負の相乗作用防止に意義が大きい、と評価した。

ギリシャの債務減免幅の拡大に関しては、
投資家の自発的な選択であるため、ギリシャ国債
債務不履行(デフォルト)と判断され、
保険の一種であるクレジット・デフォルト・スワップCDS)の
支払い請求が相次ぐ「トリガーは引かない」との見方を示した。

欧州金融機関の資金調達難については、貸し出し抑制が
欧州企業や新興国向け融資に影響を与えているとの懸念を示した。

新興国は「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は良好だが、
欧州資金巻き戻しの影響には注意が必要」と警戒した。

歴史的な水準に進行している円高について、
原発事故による化石燃料輸入増などでメリットも
あるとしながらも、現時点では企業収益や輸出への影響など、
日本経済にとってマイナス面の方が大きいと指摘した。

また、世界経済の不確実性に対する
取り組みが円相場に大きく影響すると語った。

日銀は同日の政策決定会合で、国債など金融資産の
購入原資となる基金の規模を従来の50兆円から55兆円に引き上げ、
長期国債の買い取り枠を従来の4兆円から9兆円に引き上げた。

白川総裁は、基金の買い取り期間を据え置いた理由について、
資産買い入れを加速させることが狙いと述べた。

増額対象を長期国債のみとした理由について、
国内のコマーシャルペーパー(CP)や
社債市場が円滑なため、と説明。

日銀が長期国債の買い入れ対象を残存期間2年以内としていることが
円高対策かとの質問に対しては、「為替相場は内外の2年物金利差と
相関が高いが、現在の円高は投資家による安全資産選好が主な理由」
との認識を示した。

また、「物価安定の達成にはなお時間を要する」、
「長い目で見て物価は着実に上向く方向にあり、
この流れを定着させたい」と述べる一方で、
「成長力を強化して初めてデフレ問題が解決できる」
との従来からの見解を繰り返した。