ユーロ圏景気回復はG7に大きく遅れ、金融緩和維持すべき=OECD

経済協力開発機構OECD)は29日、ユーロ圏諸国の回復は
米国やカナダに大幅に後れを取っているとの見解を示した。

その上で各国中央銀行に対し、回復が短命に終わることのないよう、
金融緩和政策の維持を促した。

主要7カ国(G7)の第1及び第2・四半期国内総生産GDP
伸び率については、国別に大きな開きはあるものの、
いずれも年率1.9%になるとの見通しを示した。

OECDの首席エコノミスト、ピエール・カルロ・パドアン氏は
記者団に「回復のスピードは明らかに異なっていて、
ユーロ圏は北米及び米国と比べて依然として
弱い状況にある」と指摘した。

今回の発表は一部の国の四半期見通しを示したもので、
詳しい内容は5月に発表される。

米国のGDP伸び率については、労働市場の改善が支援し、
第1・四半期に年率2.9%、第2・四半期に2.8%になると予想した。

米国は失業率の低下に伴い
特に家計の信頼感が改善していると指摘。

緩和的な金融状況が家計の立て直しに
寄与しているとの認識を示した。

パドアン氏は「このプロセスが続くよう、中期的に
金融政策は景気刺激的であることが必要だ」と述べた。

ユーロ圏はソブリン債務危機から脱却するなか回復ペースが
最も遅く、フランスとイタリアは第1・四半期にマイナス成長、
ドイツも0.1%の小幅なプラス成長となる見通し。

OECDは、イタリアの成長率について、第1・四半期の
マイナス1.6%に加え、第2・四半期にもマイナス0.1%と予想。

リセッション(景気後退)入りを見込んでいる。

パドアン氏は、イタリアとスペインの国債利回り
再び上昇し始めたことに触れ、「今後数四半期は
微妙な時期になるだろう」と述べた。

グリア事務総長は27日、債務危機は終わっておらず
銀行は依然脆弱と指摘し、ユーロ圏に救済基金
規模拡大を呼びかけている。

英国の成長率は第1・四半期がマイナス0.4%、
第2・四半期がプラス0.5%になる見通し。

OECDは、景気回復が依然として不安定なことを踏まえ、
各国中銀は「かなりの期間」、金利を低水準に維持し、
その他の危機対応策を継続する心構えが必要との見解を示した。

パドアン氏は「ユーロ圏では、景気が減速しても
インフレが懸念要因とならないことから、
金利に政策的余地があると指摘される可能性がある。
英国については、追加緩和が検討対象となるだろう」と指摘。

大半の国にとって依然状況は不透明で、危機対策の縮小を
考えるには時期尚早との認識を示した。

欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備理事会(FRB)の
バランスシートは過去最高水準に拡大しており、
市場では危機対策として導入した非標準的措置の縮小を
求める声が強まっている。

全般の見通しに対するリスクとしては、年初から
15%上昇している原油価格の上昇を指摘。

先進国のインフレ率を0.25%ポイント押し上げ、来年にかけて
平均で0.1〜0.2%成長を抑制するとの見方を示した。