ユーロ圏首脳、ESMの銀行直接資本注入・監督制度統一で合意

ユーロ圏首脳は29日、欧州の常設の金融安全網となる
欧州安定メカニズム(ESM)が、2013年から政府を
経由せずに直接銀行に資本を注入できるようにすることで合意した。

ユーロ圏首脳はまた、欧州中央銀行(ECB)の関与の下、
域内の銀行監督制度を統一することでも合意。

スペインなどの債務危機の波及で難局に直面している
加盟国の支援となり得る「銀行同盟」発足に向け、
大きな一歩を踏み出した。

会議は約14時間にわたり続けられ、現地時間午前4時半
(日本時間午前11時半)にようやく終了。

会議終了後に記者会見したファンロンパイEU大統領は、
会議の成果について「銀行と政府との間の負の連鎖を
断ち切るための、初めの一歩となる」と述べた。

今回の首脳会議に先立ち、ドイツのメルケル首相は
緊急措置の必要はないとの立場を示していたため、
この日合意は、イタリアのモンティ首相、及び
スペインのラホイ首相による、メルケル首相に
対する政治的な勝利と見なすこともできる。

ECBのドラギ総裁は今回の会議について、
「具体的な結果」が得られたと評価。

欧州理事会が出した結論にかなり満足している。
すべてのユーロ加盟国による、単一通貨に対する
長期的な確約が示された」と述べた。

これを受け、外国為替市場ではユーロが上昇。

債券市場では、スペインとイタリアの国債利回り
大幅に低下、欧州株式市場では主要株価指数
FTSEユーロファースト300種指数が上昇した。

今回の会議でユーロ圏17カ国の首脳は、通貨同盟の強化、
及びスペインとイタリアの資金調達コスト引き下げに
向けた数々の短期措置で合意。

共同声明には、こうした目的達成に向け、暫定的な
金融安全網である欧州金融安定ファシリティー(EFSF)と
ESMの双方が「市場安定化に向け柔軟かつ効率的な方法で」
運用されることが明記された。

共同声明には具体的な運用方法はほとんど示されなかったものの、
ユーロ圏高官は、EFSFとESMは、支援を要請する国が署名する
覚書(MOU)に基づき、発行市場と流通市場の双方において
国債を買い入れることができるようになるとしている。

買い入れ上限額は今後、設定される見通し。

スペインとイタリアは、ユーロ圏首脳によるこうした合意が
抑止効果を持つことを期待し、現時点では救済基金による
自国の国債買い入れを要請する計画はないとしている。

今回の会議でのドイツによる主な譲歩は、スペインに銀行支援を
提供する際、ESMに優先債権者待遇を適用しないとの決定だった。

バローゾ欧州委員長は「数カ月前までは考えられなかった
決定を下すことができた」としている。

ESMの優先債権者待遇をめぐっては、スペインがデフォルト
債務不履行)に陥った際はESMが拠出した資金の返済が優先され、
民間債権者への返済が後回しにされるとの懸念から、
スペイン国債の買い入れに消極的になる動きが出ていた。

ただ、メルケル独首相は、救済基金の運用には厳格な条件を
満たすことが引き続き求められるとし、利用する国に対しては
欧州委員会やECBなどが厳しく監視を行うとクギを刺している。

同首相は、圧力に屈して譲歩したのかとの質問に対し、
「金融市場からの圧力が明らかに存在する。それぞれの国の
状況は異なるが、利回りの上昇は債務状況の悪化につながり、
実体経済にも悪影響を及ぼす。解決策を探ることが
重要だった」と述べた。

これまで債務危機対策の焦点を緊縮財政から成長支援に
シフトさせるよう主張し、財政協定の再交渉を提案してきた
フランスのオランド大統領は、この日の成果に満足しているとし、
財政協定の批准に向け関連法案を議会に提出すると述べた。