スペイン中銀が財政目標達成リスク指摘、欧州で国債損失保証案も浮上

スペイン銀行(中央銀行)のリンデ総裁は4日、
政府が先に発表した2013年予算案について、
経済成長と税収に関する過度に楽観的な見通しを
ベースにしており、赤字削減目標は達成できない
可能性があるとの見方を示した。

総裁は議会予算委員会で「政府が予算案で示した
マイナス0.5%との予想は、大半の国際組織や
アナリストが示している約1.5%程度のマイナス成長と
比べると、明らかに楽観的だ」と述べた。

その上で、対国内総生産GDP)比4.5%への削減を
目指している2013年の財政赤字目標を達成するため、
政府は追加措置を検討する必要があるとの考えを示した。

また「2013年の歳入見通しには下振れリスクがある。
このリスクが現実のものとなり、2012年末までに
適切な対抗措置が講じられない場合、2013年の
目標達成は困難になる」とし、政府は2013年の
税収について穏健な見通しを策定する必要がある
と指摘した。

格付け会社フィッチ・レーティングスもこの日、
スペインの予算案は非現実的との見方を示唆した。

ソブリン格付けチームの代表デービッド・ライリー氏は
ロイター・インサイダー・テレビとのインタビューで
「予算案での想定の一部は明らかに楽観的」との見方を示した。

ただ「スペインは有益なプログラムを実施している」とも指摘し、
スペイン政府が欧州中央銀行(ECB)による債券買い入れの
条件となる支援要請に踏み切れば、投機的等級への国債格下げは
行わない考えを示した。

スペインがこの日実施した2014年、2015年、2017年償還債の
入札では、政府が最終的に支援を要請するとの観測から
14年償還債と17年償還債の落札利回りが低下。

14年償還債の平均利回りは3.282%と、
前回7月の5.204%から大きく低下した。

また欧州関係筋が明らかにしたところによると、
ユーロ圏はスペイン向け支援について、同国債
購入する投資家に損失保証を提供する形で行う案を
検討している。

これまでに実施したギリシャアイルランド
ポルトガル向け支援と異なる形をとり、スペインが
資本市場へのアクセスを維持できるようにする狙いがある。

関係筋によると、スペインとフランス、ドイツ、イタリアが
検討を進めているこの案では、スペインが発行する各種国債
最初の20〜30%について、欧州安定メカニズム(ESM)が
保証を提供する。

この計画が機能すれば、救済基金を枯渇させることなく
スペインを支援できると同時に、イタリアへの波及も
阻止できるとみられている。

関係筋は、損失保証案はまだ決定されておらず、
徹底した議論と最終的な決定には数週間かかる
可能性があるとしている。

ECBのドラギ総裁はこの日、
政策理事会終了後の記者会見で、
スペインが財政再建と経済改革の取り組みで
「大きく前進した」と評価した。

その上で、ユーロ圏諸国がECBの新たな債券買い入れ
プログラムの適用を受けるためには正式な支援要請と
条件の受け入れが必要になると改めて表明した。

こうしたなか、スペインのデギンドス経済相はロンドンで、
国内銀行の不良債権を引き受ける「バッドバンク」に関する
説明会を開いた。

参加者によると、国内経済や銀行部門の現状と
欧州連合EU)に支援を要請するかに関する
説明が中心となり、出席者の1人は「スペイン当局者の
念頭にあるのはESMへの支援要請だ」と述べた。