中銀の協調的な流動性供給、金融安定に重要な役割=日銀総裁

日銀の白川方明総裁は14日午後、都内で開かれた
国際通貨基金IMF)との共催セミナーで講演し、
国際的な金融危機などに直面した場合、
中央銀行による協調的な流動性の供給が、
金融システムの安定確保に重要な役割を果たす、
と語った。

総裁は、最近の国際的な金融危機について、
各国が国内の安定確保を目的とした経済政策を追求し、
民間の経済主体が自由に活動すれば「グローバルな
経済はうまく回る」という見方が、「あまりにも単純で
あることを示した」と発言。

さらに、「市場の自己修正力には限界があることを
痛感した」とも述べ、混乱を回避するには
「市場の軌道を、そっとあるいはしっかりと、
時として力を込めて修正しなければならない」と続けた。

その上で、最近の国際金融危機を「国際金融システムの
安定」という公共財の「過剰消費」と位置づけ、金融機関が
システムの安定を当然視して過剰なリスクを取っていた結果、
リスクが顕在化した影響が「極めて大きくなり、市場自身で
安定性を取り戻すことができなかった」と分析。

さらにアイスランドアイルランドのように金融機関が
国境を越えた事業で経営危機に陥るようなケースでは、
母国の負担を超えるコストがかかる可能性があると指摘した。

一方で、「個々の国民国家がグローバルな公共財を
提供することはおのずと限界がある」と述べ、
世界的な金融環境の監視やリスクの特定を
超国家的な組織に任せるなど、問題解決に
向けた現実的なアプローチを追求すべきと提言した。

中央銀行もガバナンス面で重要な主体だと述べ、
危機に直面した際の中銀による協調的な流動性
供給は「金融システムの安定性を確保するために
重要な役割を果たす」と強調。

一方、金融政策の国境を越えた波及と、
それが自国経済に跳ね返ってくる問題に触れ、
「こうした効果が十分に内部化されないと、
国際的な金融システムの安定性は遠ざかって
しまうかもしれない」と語った。