12月の月例経済報告、基調判断を5カ月ぶり維持

政府は21日に発表した12月の月例経済報告で、
景気は「世界景気の減速などを背景として、
このところ弱い動きとなっている」として、
基調判断を据え置いた。

海外経済の急減速などを受けて11月まで景気判断を
連続して下方修正してきたが、個人消費の底入れなどを支えに、
5カ月ぶりに判断を据え置いた。

基調判断の下方修正に歯止めをかけたのは、個人消費
宅建設、鉱工業生産の上方修正。10月の実質消費総合指数が
季節調整済み前期比で0.5%増と2カ月ぶりにプラスと
なったことに加え、10月鉱工業生産が季節調整済みの
前月比で増加に転じたことなどを受け、生産の判断を
「減少しているものの、そのテンポは緩やかになっている」と、
前月の「減少している」から1年4カ月ぶりに上方修正した。

エコポイントの期限切れを前に駆け込み需要が相次いだ
宅建設も、半年ぶりに判断を引き上げた。

判断を下方修正したのは設備投資と公共投資、輸出、企業収益、
業況判断の5項目。復興需要などを背景に堅調な推移を続けてきた
公共投資は、引き続き増勢基調にあるものの、伸び率が次第に
鈍化してきたことを受けて2年半ぶりに下方修正。

設備投資も資本財総供給指数など「供給側の弱い動き」
内閣府幹部)が続いていることから、2カ月連続で
判断を引き下げた。

内閣府幹部によると、個別項目の判断に上方、下方修正が
入り混じり、経済の現況が「混在している」ことが、
基調判断を据え置いた最大の理由。

だが、個人消費の上方修正は「マイナス要因がなくなった」
ことが主因で、景気後退局面入りの可能性に言及している
前原誠司経済財政担当相が示した景気認識は大きく変わらず。
米国では減税措置の失効と歳出の自動削減開始が重なる
「財政の崖」をめぐるリスク要因もくすぶっているとして、
国内景気の先行きをめぐる表現は「海外景気をめぐる不確実性は
依然として高く、景気を下押しするリスクとなっている」と記した。

関係閣僚会議の終了後に会見した前原経財相は「自動車販売に
下げ止まりの兆しが見られ、生産の減少テンポも緩やかに
なってきた一方、収益が弱含んでおり、企業マインドは
慎重さを増し、設備投資が弱い動きとなっている。全体として
景気の基調は先月から大きく変化していない」と判断を
据え置いた背景を説明。

米財政・欧州債務問題など「世界経済がどうなっていくか、
という不確定な要素も多い」と述べた。

日銀の白川方明総裁はこの日の関係閣僚会議の席上、
城島光力財務相の為替動向に関する質問に対して
「投資家のリスク回避姿勢、欧州政府債務問題に対する
最悪のリスクを意識する度合いが低下していることが、
円安の大きなドライバーになっている。安全通貨と見られる
円の買い需要が減少している」などと説明。

最近の貿易赤字も「原発が稼働していないことで、
天然ガスなどの輸入が増加している。当面この基調は
変わらない」として「貿易赤字は実需のフローという点で、
円安方向に働く」と分析した。

さらに、短期的な問題として「米国の『財政の崖』問題が
決着するか、混乱を来たすのかが影響する。為替の動きの
背景には、いろいろな要因が働いている。注意して
見ていきたい」と話した。