米下院、「財政の崖」回避目指し30日夜に議論再開へ

米議会指導部は27日、年明けから減税失効と
自動的な支出削減が発動される「財政の崖」を
回避するため、土壇場の協議に臨む構えを示した。

協議が決着しなければ、1月1日から大半の米国民に対して
大幅な増税が実施されるほか、1月2日から政府支出が
自動的に削減されることになる。

下院共和党幹部は、米東部時間30日午後6時半
(日本時間31日午前8時半)に議論を再開する方針を
示すとともに、議員らに対し、採決が行われる場合に
備えワシントンに戻るよう指示した。

また、共和党の下院ナンバー2であるエリック・カンター議員は、
共和党議員に対し、11月の選挙で当選した議員による新議会が
始まる前日の1月2日まで審議が継続される可能性に備えるよう求めた。

一方、クリスマス休暇を早めに切り上げて27日に
ワシントンに戻ったオバマ大統領は、28日にベイナー下院議長、
リード民主党上院院内総務、マコネル共和党上院院内総務、
ぺロシ民主党下院院内総務とホワイトハウスで会談する予定。

会談は2000GMT(日本時間29日午前5時)から始まる予定。

だが、富裕層への増税策など民主、共和両党が対立している
項目については依然として溝が埋まっておらず、土壇場で
協議がまとまるかどうかは予断を許さない。

土壇場の協議では、増税対象とする富裕層の年収基準や
支出削減幅など「数字」をめぐって真剣な交渉が行われる
可能性もある一方で、協議がまとまる見込みがない場合には
双方が政治的な「非難合戦」を繰り広げるだけに
とどまる可能性もある。

共和党のボブ・コーカー上院議員は、「オバマ大統領との協議で
何らかの建設的な成果が得られるとは思えない」との見方を示した。

共和党のマコネル上院院内総務は、「財政の崖」を回避する
時間はまだあるとの認識を示したものの、「崖っぷちに
立たされているからといって、上院民主党が提示する案に対し
白地小切手を切るつもりはない」と述べた。

一方、民主党のリード上院院内総務は、米国は
「財政の崖」から転落する方向に向かっている
もようだとの認識を表明。

共和党増税の受け入れを拒んでいることが議論を
行き詰らせていると批判した上で、下院を支配している
共和党に対し、年収25万ドル超の世帯を除く国民を
対象とした減税延長法案を通過させることで財政の崖による
最大の打撃を回避すべきだと訴えた。

さらに「下院は(共和党の)ベイナー議長の独裁で
運営されているようだ。多くの下院議員は望む行動を
取れずにいる」と批判。

「ベイナー議長は米国の安定を守るよりも、自分の地位を
維持することに関心があるようだ」と皮肉った。

共和党内では、依然として増税
いっさい認めないとする声が強い。

実際、共和党のベイナー議長が先に年収100万ドルを超す
富裕層への増税を認める案を提示したものの、党内の反対で
採決断念に追い込まれた経緯がある。

ただ、共和党内にも歩み寄りの兆しが現れている。

ジェフ・フレイク下院議員(アリゾナ州選出、1月から
上院議員に転出)は「財政の崖」を回避するにはある程度の
増税は受け入れざるを得ないが、支出削減策が盛り込まれなければ
協議はまとまらない可能性がある、との考えを示した。

「財政の崖」に伴う措置は増税が始まる1月1日から発動されるが、
厳密に言えば、合意に向けた作業が進んでいる場合には、翌日まで
下院での議論が続けられる可能性がある。

共和党のアンディ・ハリス下院議員は「1月1日の期限は
やや形式的なものだ。われわれは遡及的に対応することが
できる。拙速に行動するのではなく、適切な行動を取るべきだ」
と語った。

米国の金融市場は「財政の崖」をめぐる協議の行方に
一喜一憂しており、27日の株式市場ではリード上院院内総務による
悲観的なコメントを受けて一時1%超下落した後、下院が30日に
討議を再開すると伝えられたことから下げ幅を縮小して取引を終えた。

財政の崖問題は実体経済にも影響を及ぼしており、
27日にコンファレンス・ボード(CB)が発表した
12月の消費者信頼感指数は4カ月ぶりの低水準となる
65.1に低下した。