IMFが2013年の世界成長率予想を下方修正、欧州・日本下押し

国際通貨基金IMF)は23日、世界経済見通しの
改定を発表し、2013年の成長率見通しを下方修正した。

予想外に長引くユーロ圏のリセッション(景気後退)や
日本経済の低迷が今年の世界経済を圧迫するとの見方を示した。

その上で、来年は成長が加速し、2010年以来の
強い伸びになる可能性もあると指摘した。

2013年の世界経済成長率は3.5%と予想し、10月に示した
前回見通しの3.6%から下方修正。

2014年については、ユーロ圏の回復が根付けば
4.1%に加速するとの見通しを示した。

世界経済の成長率は、金融危機が和らいだ2010年に
5.1%に達したが、その後は4%を上回ることなく推移している。
2012年の成長率は3.2%だったとしている。

IMFの首席エコノミスト、オリビエ・ブランシャール氏は
記者会見で、「特に金融市場で楽観論が出ており、慎重ながらも
楽観的な見方は当然、正当化される可能性がある」と指摘。

米国では「財政の崖」が概ね回避され、欧州では
様々な政策措置により債務危機が緩和されたとし、
「前年のこの時期の状態と比べると、重大なリスクは
後退した」との考えを示した。

ただIMFは、大幅な下方リスクは依然として存在すると警告。

ユーロ圏債務危機の再燃や、米政府による
過度な財政緊縮などをリスク要因として挙げた。

ブランシャール氏は、米国の財政の崖について
「崖は回避された可能性があるが、まだ大きな問題に
直面している」としている。

ラガルド専務理事は、スイス東部ダボスで開かれている
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、
世界経済の回復は依然ぜい弱で、不透明感も
高いとの見方を示した。

その上で、不透明感払しょくに向け、
財政当局者に改革機運を維持するよう求めた。

2013年は「今後の動向を大きく
左右する正念場の年」としている。

IMFは米国の成長率を、2013年が2%、
2014年が3%と予想。

「短期的に過度な財政緊縮の回避、速やかな
債務上限引き上げ、給付金と税制の改革に
主眼を置く信頼の置ける中期的な緊縮財政措置の
合意が、優先事項として挙げられる」とした。

先進国の成長率は、2013年は1.4%、
2014年は2.2%と予想。

ブランシャール氏は、2013年の成長は失業率を
引き下げるには緩慢過ぎるとの見方を示した。

IMFは、特にユーロ圏で財政・銀行改革が失敗した場合、
ユーロ圏の長引く停滞が脅威になるとの見方を示している。

ユーロ圏の成長率見通しは、2013年が
マイナス0.2%、2014年がプラス1.0%。

日本は財政出動や金融緩和、円安などが寄与して
2013年は1.2%成長するものの、2014年には
0.7%に鈍化すると予想。

日本は一段と野心的な金融緩和措置を実施し、
財政緊縮化に向けた「信頼の置ける」中期計画を
策定する必要があるとの立場を示した。

先進国の緩和的な金融政策と財政政策により
「通貨戦争」が発生する恐れがあるとの懸念が
浮上していることについて、ブランシャール氏は
明確に否定。

「通貨切り下げ競争に関する議論が熱を帯びているが、
これは過度に誇張されている」とし、新興国への
資金流入が著しく変化した訳ではないとの見方を示した。

新興国、及び途上国の成長率は、2013年は5.5%、
2014年は5.9%に加速すると予想。

支援的な政策によりこれまで成長が後押しされてきた
としながらも、貿易相手国の需要が減退していることが
引き続き問題となると指摘した。

中国の成長率は、2013年は8.2%、
2014年は8.5%になると予想。

2012年から加速するものの、2010年に見られた
10%を超える成長には及ばないとした。

IMFは、中国とインドを含むアジアの新興国の成長率が
2013年は7.1%、2014年は7.5%と予想。

世界で最も成長率が高い地域で
あり続けるとの見方を示した。

サハラ以南のアフリカの成長率予想は、
2013年が5.8%、2014年が5.7%。

世界で2番目に高い成長を
示す地域になるとしている。