金利1%上昇で国内行の債券損失6.6兆円=日銀

日銀は17日、金融システムの現状と展望を
まとめた「金融システムリポート」を公表した。

金融機関による国債を中心とした債券投資の影響で、
金利が全年限にわたって1%上昇した場合、
国際統一基準行で3.2兆円、国内基準行で3.4兆円、
計6.6兆円の評価損が発生すると試算した。

昨年10月の同リポートでは6.7兆円と
試算しており、小幅減少している。

自己資本とリスク量を比べた場合、リーマン・ショック並みの
大幅な景気後退や金利の3%程度の上昇などが発生しても、
「銀行の資本基盤が全体として大きく損なわれる事態は
回避される」としている。

同リポートでは、金融システムが抱えるリスクについて、
信用、株式、金利などリスク量全体として「総じてみると、
自己資本との対比で引き続き減少している」と分析。

ただ、金融機関の国債保有など有価証券投資のウエートが
高まる中で、国内金融機関の「金利リスク量は総じて
増加方向にある」としている。

特に債券の平均残存期間をみると、大手行が2年半程度で
あるのに対し、地域銀行は4年程度、信用金庫は5年近くと
なっており、リスク量の増加が顕著だ。

具体的には、大手銀行と地域銀行について、
金利上昇による債券時価の変動を試算。

国際統一基準行は、全年限にわたって金利
1%上昇した場合に3.2兆円の評価損が発生。

同2%で6.2兆円、同3%で8兆円と見込んでいる。

一方、国内基準行は同1%で3.4兆円、
同2%で6.3兆円、同3%で8.6兆円となる。

金利上昇に伴う運用利回り上昇で資金利益も改善するが、
金利が3%上昇した場合、国際基準行の中核的な自己資本
(Tier1)比率は1.1%ポイント低下すると見込んだ。

日本の金融システムが全体として安定性を維持している中、
その場合でもTier1比率は「全体として規制水準を上回る」
としている。

もっとも、財政不安などで景気の上振れを伴わずに
金利が大きく上昇するようなショックが発生すれば、
保有債券の損失発生で自己資本がき損し、国際基準行を
中心に「金融仲介機能が制約される可能性がある」とも指摘。

金利が全年限にわたって2%上昇すると想定した場合、
貸出の抑制や貸出金利の上昇などを通じて名目国内総生産
GDP)は最大で1.7%ポイント下振れると試算している。