欧州緊縮策めぐる議論再燃、IMFとECBが成長と財政再建で対立

欧州の緊縮財政策をめぐり、成長支援の必要性を唱える
国際通貨基金IMF)と、財政再建維持を求める
欧州中央銀行(ECB)の意見が対立している。

ユーロ分裂懸念が後退し、金融市場がひところの
緊張状態を脱し落ち着く中、一部のユーロ圏当局者からは
緊縮路線の見直しを求める声が出ており、IMF
緊縮一辺倒の政策を軌道修正するようユーロ圏や
英国に提言している。

だがECB、ドイツは緊縮堅持が
不可欠との立場で一致。

欧州緊縮政策をめぐる議論が再燃している。

リプトンIMF筆頭副専務理事は25日、ロンドンで
開催された会議で「欧州はスタグネーションに
陥る恐れがあり、そうなれば家計、企業、銀行や
その他の基幹となる機関に深刻な影響が及ぶ
可能性がある」と指摘し、「こうした危険なリスクを
断固として回避するため、政策当局者は成長見通しを
強化するよう行動すべき」と主張した。

一方、アスムセンECB専務理事は同じ会議の場で、
財政再建と改革を断行するよう主張。

「財政健全化の先延ばしには代償が伴う。債務水準が
高まる。ユーロ圏はすでに公的債務が非常に多く、
大きな負担になる」と述べた。

ユーロ圏の景気低迷が長期化する中、市場ではECBが
早ければ来週の理事会で利下げに踏み切るとの観測が高まっている。

リプトン筆頭副専務理事は「IMFはおそらく追加の
非標準的措置を講じる必要がある」とする一方、
アスムセン専務理事は、金融政策は
「万能薬ではない」との立場だ。

ECBの金融政策をめぐっては、メルケル独首相がこの日、
ドイツの状況だけを考えれば利上げが必要との考えを表明。

「ECBは難しい状況にある。ドイツのためには、
今若干の利上げが必要だろう。ただ、他の国には
さらに多くの流動性を供給するため、さらに対策を
講じる必要がある」とした。

欧州委員会は来月、スペインやフランスなど景気低迷に
苦しむ一部のユーロ圏諸国に対し、財政赤字削減目標の
達成期限延長を認める見通しだ。

スペインでは失業者が600万人を突破、若者の半分以上が
失業状態で、債務危機に苦しむユーロ圏諸国の苦境を
浮き彫りにしている。

欧州委のバローゾ委員長は、緊縮策に対する
国民の支持は限界に来ているとの見解を表明。

レーン副委員長はこの日、「財政再建ペースは各国の
経済状況を踏まえるべきとの立場を明確にしてきた」とし、
「欧州の財政再建ペースはすでに鈍化している」
との認識を示した。

ただ、財政緊縮の緩和余地は限定的な公算が大きく、
強力な銀行同盟の創設以外に危機脱却はないと
エコノミストは指摘する。

ECBも25日、ユーロ防衛にあらゆる措置を講じると
表明して以降、金融市場は落ち着きを取り戻したが、
銀行同盟構想に足踏みの兆候が出れば、
再び不安定化すると警告した。

ただドイツは負担増を警戒しており、メルケル首相は
銀行同盟の柱である単一の銀行預金保証制度に対し
改めて反対を表明した。