ECBは危機対処で多くの措置、単独で解決できず=独連銀総裁

欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁は
23日、ECBにはユーロ圏危機を解決することはできないとし、
政策手段の拡大が可能とする他のECB当局者の見解を退けた。

イトマン総裁はパリでの講演で、ECBは利下げや銀行への
流動性供給、ソブリン債市場への介入を通じ危機対処に
貢献してきたとした上で、「金融政策は危機を解決できない
との見解でECB理事会は一致している」と言明した。

総裁はさらに「金融政策、言い換えればユーロシステムは、
危機対処で多くの措置を講じてきた」と語った。

「危機の根源は構造的な問題」とし、「構造面に焦点を当てた
措置のみが、危機を解決できる。ユーロシステムは、
欧州各国政府が危機を克服するための時間を稼いだ」と述べた。

プラートECB専務理事は22日、物価安定へのリスクに
対応する必要があれば、ECBとして金融政策の手段を
拡大することが可能と述べていた。

イトマン総裁は全ての中央銀行が「異例の政策手段」を用いて
「異例の危機」に対応してきたとしたが、米連邦準備理事会
FRB)のバーナンキ議長が今後数回の連邦公開市場委員会
FOMC)で、債券購入ペースを減速させることが可能と
言及したことにはコメントしなかった。

日銀による大規模な金融緩和策について問われた際、
「試みが上手くいくことを祈る。彼らは確実に、
債務の持続可能性という課題を抱えている」と述べた。

インフレを警戒するタカ派として知られるバイトマン総裁は、
ユーロ圏の各国が容易な解決策を取り、構造改革を推進するより
金融政策に頼り過ぎることにならないよう警告した。

ECBが物価安定という責務を遂行できるよう、各国は
健全な財政が確保されているようにすべきだと指摘した。

リスクテークに慎重になっている銀行がユーロ圏の周辺国の
小規模事業者への貸し出しを行っていないことをECBは
懸念しており、問題解決のため、欧州投資銀行(EIB)と
作業部会を設置。

だがバイトマン総裁は中小規模企業(SME)の支援という点で
ECBにできることが限られているとの見方を示し、ユーロ圏全体で
企業向けの金利を均一化することが政策目標ではないとした。

また、バイトマン総裁はフランスの経済情勢について、
同国が過去3年で構造的な赤字を年間約1%ポイント削減した
ことを評価しつつも、「現在残されている財政政策上の課題を
踏まえると、フランスは赤字削減に向けた既存の指針を
堅持する必要があると考える」と語った。