固定金利オペの延長、政策の枠組み修正との誤解を懸念=日銀議事要旨

日銀が17日公表した議事要旨によると、6月10〜11日に
開催した金融政策決定会合では、長期金利が不安定な
状況にある中で固定金利(現行0.1%)オペレーションの
資金供給期間1年超への長期化が議論されたが、現時点では
必要ないとの見解で政策委員が一致した。

同オペの延長が過度な金利変動の抑制に効果がある
との指摘が出た一方、金融政策の枠組み修正や時間軸に
関するメッセージと誤解される可能性があるとの懸念が
表明されていたことが明らかになった。

議事要旨によると、固定金利オペの期間延長について、
何人かの委員がメリットとして「こうしたオペを適切な
タイミングで実施すれば、過度な金利変動の抑制に
相応の効果を発揮しうる」と述べるとともに、
「そうしたオペが準備されていれば、その存在自体が
市場の安心感につながる」と指摘。

一方、何人かの委員は「調節手段の拡充という面を超えて、
金融政策の枠組みの修正や時間軸に関するメッセージを
有する措置として市場で誤解される可能性がある」
と懸念を表明した。

議論の結果、「当面は現在の枠組みのもとで、弾力的な
オペ運営を行うことにより、金利の安定的な形成を
促しておくことが可能」との見解を何人かの委員が示し、
現時点では固定金利オペの期間延長は必要ない
との認識で政策委員が一致した。

6月に第1回目の貸し付けを実行した「貸出増加を
支援するための資金供給」制度について、複数の委員が
「副次的な作用として金融機関の金利リスク削減に
一定の効果をもたらす」と指摘。

固定オペの延長に際しては、何人かの委員が「両者の
関係を整理する必要がある」と発言している。

会合前後の金融市場は、株安・円高方向の動きが続いていたが、
この背景について何人かの委員は「投資家のリスク回避姿勢の
強まりを背景に、昨年秋以降の大幅な株価上昇、円安方向の
動きに対して調整が入ったもの」との見方を示した。

要因の1つに米連邦準備理事会(FRB)による資産買い入れ
縮小観測があげられ、この点についてある委員は「FRBによる
資産買い入れの縮小時期についての思惑が、株価や金利
為替に変動を引き起こす事態が斬り返される可能性」を指摘。

1人の委員は米金融政策の思惑が世界的に資金の流れを撒き戻し、
「欧州や新興国での資金調達に悪影響を及ぼす可能性」に言及した。

足元の株安が日本経済に与える影響については、何人かの委員が
「消費者マインドを通じて個人消費にどのような影響を与えるか」
注視する必要性を強調。

減速懸念が強まっている中国経済については「製造業部門に
いく分弱さがみられるなど、改善の動きが想定よりもやや鈍い」
との見方を多くの委員が示した。

金融政策運営では、ある委員が2%の物価安定目標を
2年程度で達成することは難しいとの見解を表明した。

異次元緩和の長期化や極端な追加措置への観測が高まれば
「中長期的な経済の不安定化につながる懸念がある」とし、
異次元緩和の2年限定を主張これに対して1人の委員は
異次元緩和を2年に限定することは「緩和効果を弱める
可能性がある」と指摘した。

会合では、4月4日に決めた異次元緩和の
継続が全員一致で決定された。

会合では財務省からの出席者が「市場との対話」を通じた
弾力的なオペ運営への取り組みを求めるとともに、
財務省として、長期金利が急上昇することがないよう、
「財政健全化に全力を挙げて取り組んでいく」と強調した。