中国経済の失速を示すものではない=成長率見通し下方修正でADB総裁

中尾武彦・アジア開発銀行(ADB)総裁(前財務官)は17日、
都内で講演し、ADBが中国の2014年の経済成長率見通しを
8.0%から7.5%に下方修正したことについて、「経済の失速を
示すものではない」との見解を示した。

足元で広がる「中国リスク」について、短期的に
大きな問題になるとは思っていないとした。

ADBは16日、中国の2013年の実質経済成長率の見通しを
7.7%、2014年は7.5%に、いずれも4月時点の予想から
0.5%ポイント下方修正した。

最近の輸出入の減速や
金融引き締めを反映したものと説明した。

足元では、影の銀行(シャドーバンキング)と呼ばれる
銀行融資以外の金融取引に対する不透明感から
中国リスク」への警戒感が広がっている。

中国リスクについて中尾氏は「短期的には、
ノンバンクのバブル的状況を抑えようと、
人民銀行が信用の量を少し締めた結果、
短期金利が振れ、人民銀行のやり方として
どうかという議論や引き締めが強化されれば
さらに減速するなどとの議論は確かにあり得る」
としながらも、中国政策当局者には「成長は大事だが、
消費を喚起し、不動産や民間の設備投資に偏らない
バランスのとれた成長」に対する明確な意識があると強調した。

金融政策の手法についても「偏った形でノンバンクが発達し、
消費者保護の観点からも放置できない問題になりかねない。
中小企業にカネがうまく回る形になっていない」ことに対して
「明確な形で行動した」と述べ、引き締めによって「短期的に、
大きな問題になるとは思っていない」とした。

一方で、輸出の減速傾向は明確で、中国の主要輸出相手である
欧州経済が低調なため「これまでのような輸出の勢いは
ないかもしれない」と見通した。

米国の量的緩和の出口戦略と新興国への資金フローの問題では、
インドネシアでの株価の下げなどを挙げ、「資金の巻き戻しの
恐れを感じ、彼らが注意していることは確かだ」としながらも、
リーマン・ショック後のような大きな動きになっているか
というと、今までの困った経験から、各国の中銀に
よく注意しておかなければならないとの意識がある」と語った。

アジア共通通貨構想については「アジア開発銀行として、
いまアジェンダとして取り上げて進める考えはない」と語った。