米FRB議長、資産購入縮小は「景気次第」

米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は17日、
下院金融委員会で半期に一度の議会証言を行い、
資産買い入れ縮小を年内に開始するとのシナリオを
改めて示す一方、経済見通しが変化すれば変更の
余地もあると述べた。

6月に示した買い入れ縮小の行程を堅持する一方、
予断を持たない姿勢を強調する格好となった。

議長は資産買い入れについて「景気と金融の動向次第」とし、
「決して既定路線ではない」と言明した。

バーナンキ議長は6月19日、景気回復が予想通り進んだ場合、
年内に資産買い入れの縮小に着手し、2014年半ば頃までに
終了する可能性に言及。

この日の証言もこうしたシナリオに沿う内容となった。

ただ同時に、経済状況が予想以上に急速に改善すれば、
資産買い入れ縮小のペースを「幾分速める」可能性もあるとした。

一方で、労働市場の見通しが悪化するか、インフレ率が
目標の2%まで上昇しそうになければ、現行月額850億ドルの
資産買い入れプログラムは「より長期間維持される可能性が
ある」とし、「必要なら、一定期間買い入れペースを上げることを
含む全ての手段を用いて、物価安定下での最大雇用への回帰を
促進する用意がある」と述べた。

議長は縮小の見通しに言及した理由について、
金融市場でのバブル形成を防ぐことが
目的の一つだったと説明。

「これらの問題について語らなければ、市場の期待が
FOMCの期待から遠ざかるディスロケーションが
起きる恐れがあった」とし、市場のレバレッジ拡大や
過剰なリスクテークを招く恐れもあったと指摘した。

議長は債券買い入れ終了を視野に入れる一方で、
インフレが抑制されている限り失業率が6.5%に
低下するまで事実上のゼロ金利を継続する方針を再表明した。

また、失業率低下が雇用増によるものか、あるいは
労働参加率の低下によるものかを注意深く見極めるとし、
後者の場合は利上げにいっそう慎重になるだろうとした。

さらに、利上げを開始した場合でも、段階的になると指摘した。

その上で「資産買い入れに関してわれわれは入手する
指標に非常に敏感に反応する意向だが、同時に、
金利政策を含むFRBの全体的な政策は引き続き極めて
緩和的になると理解することが重要だ」と述べた。

議長の発言を受けて金利先物市場では、16日時点で
早ければ2014年10月とみられていた利上げ
開始時期の予想が2014年12月に後ずれした。

資産買い入れについては、9月の
FOMCで縮小に踏み切ると予想されている。

膨れ上がったFRBのバランスシートをめぐっては、
急速な縮小を回避するため、買い入れた国債
満期まであるいは長期間保有し、償還資金を
再投資する可能性を示唆した。

インフレに関しては、一時的な要因で物価上昇が
抑制されているとの認識を改めて示す一方、
非常に低いインフレ率がデフレリスクを増大させ、
景気の腰折れを招く恐れがあることを当局者は
認識しているとも述べた。

また、景気が緩やかなペースで改善を続けている背景には
住宅部門が強さを増している状況があるとし、それが
労働市場の段階的な改善にもつながっているとの認識を示した。

経済に対するリスクが昨秋以降低下した
とのFRBの認識も改めて表明した。

ただ、政府による増税や歳出削減は依然、経済成長を
予想以上に圧迫する可能性があるほか、海外の状況悪化も
マイナス要因となり得ると述べ、「景気回復のペースが
依然緩やかにとどまっていることを踏まえると、
世界経済が予想以上に減速する可能性といった
予期しない衝撃に対して米経済は引き続き
ぜい弱と言える」とした。

バーナンキ議長の任期は来年1月に切れるが、
任期満了で退任となれば、議長にとって
今回の半期証言が最後となる可能性もある。