緩和縮小でFRBと市場の理解に齟齬、政策反応共有難しい=日銀国際局長

日銀の外山晴之国際局長は24日に開かれた金融市場パネルで、
米連邦準備理事会(FRB)の非伝統的金融政策について、
いわゆるテーパリング(緩和縮小)をめぐり市場とFRB
理解に齟齬があったためにタームプレミアムが
大きく振れたと指摘した。

今後、FRBの政策を占う上では、今年5月以降の政策を
どう理解するかが大変重要になるとの認識を示した。

また、中央銀行にとって非伝統的政策は財政政策や
構造政策の代替とはなり得ないとし、それらが適切に
運営されなければ効果を発揮できないと述べた。

さらに、その目標が達成できなかったり、弊害が大きくなると、
中央銀行の信認が毀損されるリスクもあると指摘した。

外山国際局長は、FRBと金融市場の間の量的緩和
QE)政策に対する理解の差異を何点か指摘した。

一つには、FRB量的緩和縮小を議論していた際に、
金融市場のタームプレミアムが大きく動いたことに関して
「市場は金利引き上げにつながる一連のプロセスの始まりだ
とみていたなら、それはFEDの理解とは齟齬があった」とした。

また、透明性に関する課題も挙げた。

連邦公開市場委員会FOMC)の19人の参加者が
それぞれの見方を提出しているものの、合議体としての
FOMCが一つだけ発表する声明と整合性があるのか
という問題があると指摘。

19通りの政策反応関数を合体させるのは難しく、
物価や経済見通し、政策金利見通しを19通り発表する
しかないということになりかねない、とした。

米国経済自体が変化している可能性がある中で、
政策反応関数を市場と共有していくことも難しい
と指摘した。

労働生産性がこれからどう動いていくか
ということも重要だと強調。

この点ついても、市場参加者とFRBが考え方を
共有できないと、政策反応関数の共有も難しい
との認識を示した。

政策反応関数の共有の難しさをFRBのテーパリングに
当てはめると、バランスシート政策の出口において
テーパリングは金利引き上げに先行するものであり、
十分予見できるものであるにもかかわらずマイナスの
タームプレミアムが解消するほど大きく振れた
背景については、バランスシート政策に対する
理解の相違があったこと、投資家の経済見通しが
急速に修正されたこと、一部の投資家のリスク許容度が
極端に高まったことなどが指摘されていると語った。

さらに、市場で低金利が長く続くと
理解されていた可能性もあるとした。

その上で、同局長は「今後のFOMCの政策を
占うにあたっては、今年5月以降の政策を
どう理解するかが大変重要になってくる」とした。

外山国際局長は最後に、非伝統的金融政策を実施する際に
その特徴として認識しておく点を指摘。

まず、「非伝統的政策は、財政政策や構造政策の代替とは
なり得ないとし、適切な財政政策や構造政策が行われてこそ、
非伝統的金融政策は効果を発揮し得る」と述べた。

また、「非伝統的金融政策は従来と異なるリスクと対峙するとし、
たとえば政策目的が達成できなかったときや弊害を招いた場合、
信認が毀損されることになる」と注意を促した。

さらに 「非伝統的金融政策は困難な経済情勢の中で
行われるものであり、結果が出ていれば効果を
過大視することになり、逆風が吹き、結果が出にくい時には
効果を過小評価しがちになる」と指摘した。