雇用情勢で日銀リポート、人手不足も賃上げに課題

日銀は16日、四半期ごとに公表している
地域経済報告(さくらリポート)」で、
雇用・賃金情勢の調査結果をまとめた。

景気回復に伴い各地で人手不足が顕著になるなど
雇用環境の改善が進んでいるのを確認した内容だ。

人手不足により工期の遅延など一部の
業界では業務に障害もみられつつあるという。

ただボーナスや非正規労働者の時給は上昇しているが、
正社員の賃金を引き上げる動きは限定的との調査結果となった。

人手不足が深刻なのは自動車用部品、
医療・福祉、ホテル・旅館など。

日銀の各地の支店からは、「低賃金重労働の
介護業界への就職を避ける傾向がある」
(名古屋、松山、長崎支店)、「建設業界で
経験を有するタクシードライバーが、
より良い雇用条件を求め建設会社へ転職」
(高知)との報告があった。

建設、医療・福祉、小売り、運輸などの業種では
人手不足が事業のボトルネックとなり始めている。

被災地の建設業界では「復興関連工事は増加しているが、
人員確保が容易でなく入札を諦めたり、受注を選別」
(仙台、福島)、他の地域の建設業でも「人手不足で
工期の遅延もみられる」(札幌、福岡)。

警備業は「依頼は多いが、人手不足のためやむを得ず
断るケースが増加」(青森)という。

人手不足は賃金の上昇圧力となるはずだが、
現時点では時間外給与の増加や非製造業の
正規雇用などにとどまっているもよう。

大型小売店コンビニエンスストアのパート・
アルバイトや運送作業員、コールセンタースタッフ、
自動車関連の期間従業員などは時給引き上げ、
自動車や自動車部品、電気機械、住宅・公共工事向け
建材、建設などで時間外給与引き上げの報告があった。

定例昇給については名古屋支店管内の電気機械や
スーパー、ベースアップは岡山・京都の建設、
札幌の建設資材製造で報告があったのみだった。

逆に賃下げの動きもみられる。

静岡では運輸・部品加工業者が「大手製造業の
値下げ要請が続き、収益が悪化しているため
ボーナスを減額した」との報告があった。

昨年4月に打ち出した異次元緩和の効果などで
景気や物価は想定通り回復しつつあるとみている。

しかし、今年4月以降、賃上げの動きが不十分だと
消費増税が消費ひいては景気回復に水を
差しかねないため日銀は注視している。