IMFが世界成長率予想3.7%に上方修正、デフレリスク懸念

国際通貨基金IMF)は21日、「世界経済見通し」の
改定を公表し、今年の世界経済の成長率予想を
10月時点の3.6%から3.7%に引き上げた。
見通しの上方修正は約2年ぶり。
2015年は3.9%を見込む。

経済への向かい風が弱まっており、先進国が
新興国から成長のバトンを引き継ぐとの見方を示した。

ただ、先進国は依然として潜在成長率を下回っているとし、
景気回復の阻害要因として先進国のデフレリスクに言及した。

IMFの首席エコノミスト、オリビエ・ブランシャール氏は
記者団との電話会見で「回復加速の基本要因は、回復への
ブレーキが着実に弱まっていることだ」と指摘。

緊縮財政の足かせ軽減や不透明性の低下、
金融システムの健全性向上など、いずれも
成長加速の追い風となると述べた。

IMFは今年の先進国の成長率は2.2%に
引き上げたが、新興国は5.1%に据え置いた。

ブランシャール氏は声明で「2014〜2015年には、
新興国から先進国への成長のローテーションが
さらに進む」との見方を示した。

日本の2014年成長率予想は
10月の1.2%から1.7%に上方修正した。

一段の財政刺激が支援し、春の
消費税増税による影響を和らげるとしている。

一方で、日本は持続可能な成長に向け、
政府の歳出や輸出に依存するのではなく、
消費や投資に注力すべきだと釘を刺した。

2014年の米成長率予想は
10月の2.6%から2.8%に引き上げた。

議会の予算協議が決着し財政の足かせが
一部軽減されるとして、内需が成長を
押し上げる見通しとした。

英国についても、低水準の信用コストと
信頼感改善を背景に、今年の成長率予想を
1.9%から2.4%に引き上げた。

引き上げ幅(端数処理を勘案)は
主要先進国中で最大だった。

IMFは、日本がデフレに戻る公算は小さいとしたが、
物価上昇率の低迷という日本が経験した問題が、
他の先進国にも脅威になっていると指摘。

経済活動にマイナスの衝撃が及んだ場合、
ディスインフレは経済を衰弱させるデフレへと
転じる恐れがあると警告した。

物価の継続的な下落は、需要減退や消費控えを
招くだけでなく、債務負担も膨らませるため、
大規模債務を抱える米国やユーロ圏にとっては
大きな問題だ。

ブランシャール氏は「インフレ率が低く、
デフレ率が高いほど、ユーロ圏の景気回復に
とってより危険だ」と指摘。

IMFのモデルによると、10〜20%の確率で
ユーロ圏の物価が下落に向かうとの見方を示した。

中銀に対しては、回復が依然脆弱な中で、
時期尚早な利上げは回避するよう求め、
とりわけ欧州中央銀行(ECB)には
信用拡大への支援を通じて、低迷する需要を
下支えるよう要請した。

ブランシャール氏はとりわけポルトガル
ギリシャの成長が脆弱な点に言及、「南欧諸国は
引き続き、世界経済の中で特に懸念される地域だ」
と指摘した。

大規模な経常赤字を抱える、もしくは経済が
ぜい弱な一部の途上国については、米連邦準備理事会
FRB)の緩和縮小に伴う資金引き揚げで大きな打撃を
受ける恐れがあると警告。

そのような国に対しては、為替相場の下落容認、
もしくは金融政策の引き締め、または規制・
監視強化の検討を促した。

IMFFRBの利上げ時期について、
2015年まで行わないとの見方を示した。

新興国の中銀の政策余地が限られている場合には
「成長押し上げに向けた主要政策アプローチは、
構造改革の推進であるべき」と指摘した。

特に中国については、投資から消費主導型の
成長モデルへの転換を一段と加速するよう求めた。

ブランシャール氏は「中国経済が直面する主要課題は
おそらく、成長を過度に減速させることなく、
金融セクターのリスクの高まりを抑制することだ」
として、微妙な舵取りが求められるとの認識を示した。

中国の成長率については、経済改革の効果が
表れ始めるのに伴い、2014年は7.5%、
2015年は7.3%になると見込んでいる。