物価目標2%達成に自信、増税による実質所得減など注視=日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は22日の金融政策決定会合後の
記者会見で、世界経済の下振れリスクは低下しており
物価は2014年度後半以降に2%の目標に達する
可能性が高いとし、異次元緩和の効果に自信を示した。

消費増税による実質所得の減少などが景気・
物価の回復に水を差さないか注視していく姿勢を見せた。

米財務長官による円安けん制発言は
政策運営に影響がないと明言した。

総裁は景気・物価の現状について「生産から所得、
支出への好循環が続き、緩やかな回復を続けており、
すべての地域で景気回復のすそ野が広がっている」
として自信を示した。

特に海外経済については「米国や欧州など
先進国の回復基調がかなり明確になっており、
世界経済全体としてリスクがかなり低下している」
との見解を示した。

欧米のディスインフレ傾向や商品市況の
下落について「注視するが日本がひきずられて
2%目標が達成できなくなるとは考えない」とした。

株式や為替市場では、4月の消費増税を控え、
日銀が予防的に早期の追加緩和に動くとの期待が
海外投資家を中心に根強い。

市場の期待に反して追加緩和を見送ることが
市場に悪影響を与える可能性について、総裁は
「常にマーケットの状況は注視しているが、
特別な懸念は持っていない」と明言。

理由として「基本的にこれまで想定した道筋を
物価は動いており、今までのところリスクは
顕在化していない。顕在化しなければ現在の
政策が続く」と説明。

異次元緩和の効果に「手応えを
感じている」とも述べた。

もっとも総裁は同時に「当然、物価見通しについては
上下のリスクがある」とし、「上下のリスクを点検し
必要な調整を行う方針は変わらない」と、必要と
判断すれば追加緩和も辞さない姿勢も見せた。

日銀では昨年来、円安やエネルギー価格の上昇が
物価を押し上げた影響が一巡するため、夏までは
消費者物価指数が前年比1%台前半の横ばい圏で
推移するとみている。

その後、海外経済の回復による輸出や設備投資の
回復などにより再び物価が上昇基調に入り、
2%を目指すというシナリオだ。

総裁は自動車や住宅、家電など耐久消費財
「駆け込み需要が顕在化している」と指摘。

「駆け込み需要と反動減は相殺する」が、
増税により「実質可処分所得は減少する」とした。

その上で、「政府の経済対策効果、増税がある程度
織り込まれていること、社会保障が安定的になることが
家計に好ましい影響を与える」とし、現時点では消費が
腰折れしないとの見解を示した。

もっとも、企業の景況感が「地域、業種、
企業規模について幅広い改善がみられる」
にもかかわらず、個人の景況感にかげりが
見えているのは、「名目賃金の上昇が小幅に
とどまっており、特に所定内給与の改善が
みられていないため」と解説。

「常勤労働者の賃金が上昇することが、雇用者所得の
引き上げや、消費を強める意味、物価安定目標に
近づける意味でも重要」と強調した。

同時に「ベアだけが物価上昇率を決めるわけでなく、
様々な指標や経済動向をみながら政策運営していく」
と述べた。

米国のルー財務長官による円安けん制発言の
影響について、「金融政策は、物価安定の
早期実現が目標で、円安や円高を狙っては
いないので、金融政策が影響受けることはない。
制約や問題になるとは考えていない」と述べた。

政府は今年7〜9月の景気動向を踏まえ
2015年10月に予定されている消費税率の
10%への引き上げを判断するが、日銀では
「2015年10月の増税も前提に金融政策や
物価などの見通しを決めている」と述べた。