物価安定と金融安定の両立、今後の論点=日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は28日、日銀本店で開かれた
国際会議で挨拶し、金融政策を運営する上で、
物価の安定と金融の安定の両立や、金融緩和の
継続時期を示す時間軸(フォワード・ガイダンス)の
強さと柔軟性のバランスなどが今後の論点となると
指摘した。

日銀は2%の物価目標達成を目指し未曾有の
国債買い入れを軸とした量的質的緩和(QQE)に
まい進しているが、物価の順調な上昇が続けば、
長期金利の上昇など金融市場ではデフレモードからの
脱却に伴う変化が必至で、金融システムへの目配りの
重要性を示唆したとみられる。

黒田総裁はリーマン・ショックなど
先の金融危機を踏まえ、3つの教訓を列挙。

「経済全体の安定は、物価や実体経済
安定化だけではもたらされず、金融の安定化も
重要」、「政策金利がゼロ近傍にあっても、
資産買入れや時間軸など金融緩和は可能」、
「経済を回復軌道に導くためには、市場等との
コミュニケーションを通じた期待形成への
働きかけが重要」と語った。

同時に、今後解明すべき論点として「物価と
金融の安定をどう両立させるか」と問いかけ、
「金融安定政策を第一の防衛線、物価の安定を
目的とする金融政策を最終防衛線と考えるか、
あるいは、金融政策運営において物価と金融の
両者の安定を考慮すべきか」と述べた。

また時間軸政策には「政策の継続期間などを
明示しないオープン・エンド方式から、期間を
明示したカレンダー方式、特定の経済指標に
基づく条件を明示した方式まで存在する」とした上で、
「時間軸の強さと柔軟性のバランスをどう取るかが
重要なポイント」と指摘した。

非伝統的な金融政策の国際的な波及効果に関しては
「今後の研究や知見の蓄積が望まれる」と強調した。