日本は構造・財政改革を、不完全なら金利急上昇リスク=IMF報告書

国際通貨基金IMF)は30日、日本経済に関する
報告書を公表し、日本に対して構造改革など
成長戦略と財政再建の実行を強く求めた。

日本の構造・財政改革が不完全に終わり、
金融政策への負担が過大になれば、金利
急上昇するリスクがあると警告し、こうした
金利上昇を主要で中期的なテールリスクと
位置づけた。

IMFは足元の日本経済について「消費税率引き上げの
影響をうまく乗り切りつつある」とし、安倍晋三政権の
経済政策であるアベノミクスは「日本をダイナミックな
経済にするための種をまくことに、これまで
成功している」と評価した。

一方、中期的な景気回復の持続にはリスクがある
との見解を示し、意欲的な構造改革遂行に失敗すれば
「中期的には潜在成長力の上昇が制約される可能性が
ある」と指摘。

成長の阻害要因を打破するには、
より強力な改革が必要と結論づけた。

具体的には、1)女性・高齢者の雇用拡大、2)企業部門を
活性化するためのリスク資本の供給拡大、3)包括的な
企業統治改革の実行、4)農業部門と国内サービス部門の
規制緩和を挙げ、「環太平洋連携協定(TPP)合意や
国家戦略特区が対日投資の障害を取り除くことになれば、
それらの恩恵は大きなものになり得よう」との認識を示した。

構造改革とともに重要性を訴えているのが財政再建

消費税率引き上げの継続が「財政規律への信頼性確立に
不可欠」と主張し、最低でも現行8%の税率を15%に
段階的に引き上げる必要性に言及した。

2015年10月に予定されている10%への引き上げ時には、
低所得層への対応として軽減税率の導入ではなく、
補助金を通じて対処されるべき」と提案。

一方、法人税減税は「経済的な恩恵をもたらす」としたが、
「財政リスクのさらなる高まりを防ぐための財源確保」の
必要性も強調した。

財政の持続可能性を維持するための政策対応が信頼を失い、
金融政策への負担が過大になれば、金利が大きく上昇する
リスクが顕在化する可能性があると警告。

金利の急上昇リスクが日本経済の「主要な
中期的テールリスク」と位置づけた。

日銀が昨年4月に導入した「量的・質的金融緩和」
(QQE)は「予想された効果をもたらしている」と評価。

日銀は2%の物価安定目標の2年程度での達成を
目指しているが、IMFは2017年までに実現すると予想。

現状では、目標達成時期を早めるための追加緩和は
「必要ない」としたが、政策の透明性を高めるため、
2014年末以降の資産買い入れ方針を明らかにすることが
必要との認識を示した。

一方、インフレ率の鈍化や成長が期待を下回る場合、
日本銀行は迅速に行動すべき」と主張。

その際の方策として、「民間資産や国債の購入拡大」
のほか、「購入資産の残存期間のさらなる長期化が
挙げられる」とした。

また、現行のQQEの継続は「金融安定性に対する
リスクを生じさせる可能性がある」とし、
政策効果波及の強化や出口を容易にするためにも
「構造・財政改革が重要」と繰り返した。

会見したIMFのリプトン筆頭副専務理事は、
アベノミクスが不完全に終わり、金融政策だけに
なれば「金融が不均衡化し不当な円安になる
可能性がある」とし、金融緩和の効果が持続的に
発揮されるには「構造・財政改革が合わせて
実施されることが重要」と強調した。

また、現在の円相場について、中期的な日本経済の
ファンダメンタルズに沿った動きとの認識を示した。