雇用・所得の改善持続、製造業への波及など期待=日銀

日銀は16日、先行きの雇用・所得環境について、
これまでの非製造業中心から製造業における
雇用者数の増加、女性や高齢者の労働参加の拡大、
非製造業の生産性向上などによって、さらなる
改善が期待できるとの分析を「日銀レビュー」
として公表した。

レビューでは、最近の雇用・所得環境の
改善について、2002年から2007年の
前回の景気回復局面に比べ、経済成長率自体は
低いものの、雇用者数の増加ペースは
ほぼ同程度となっていると指摘。

背景として、内需主導の景気回復が続く中で、
雇用誘発効果が高い非製造業がけん引している
ことをあげた。

こうした労働需要の増加に伴って、企業が
人手確保を目的に賃上げに動いており、
「賃金感応度の高い女性や高齢者が
労働参加を活性化させた」ことが最近の
労働力率上昇につながっていると分析した。

その上で、先行きの雇用・所得環境について、
足元では製造業も雇用者数の伸び率を高める
方針を示していることに着目。

本社機能や研究開発の強化を中心とした
国内活動の充実や、「団塊の世代」の
退職に伴う技術継承の必要性などが
意識されていることを紹介し、こうした
製造業の取り組みによって「マクロ全体では
バランスのとれた雇用者数の増加が
期待できる」とした。

また、女性の労働参加拡大では、景気回復や
政府の成長戦略の推進などで「特定の労働形態に
偏ることのない、歪みのない労働参入が
促されることが期待される」と指摘。

さらに、シニア消費の掘り起こしや物流部門の
改善など企業の取り組みが奏功する中で、
非製造業の生産性向上に伴う賃金上昇も
期待できるとした。

レビューでは、最近の雇用増について
「これまでのところパートなど非正規雇用
短時間労働が中心」になっているとし、
これが1人当たり賃金の押し下げに
つながっていると分析した。

しかし、労働需給のタイト化に伴って
一般労働者を含めて「一人ひとりが
直面する賃金・時給の水準は、緩やかながらも
上昇」しており、女性や高齢者の労働参入は
「世帯単位、ひいては家計全体でみれば、
確実に所得の増加を生み出している」と指摘。

「その効果は平均賃金水準低下のマイナス効果と
合算して評価すべき」との見解を示している。