追加緩和、消費増税延期で間違いだったとは思わない=日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は19日の金融政策決定会合後の
記者会見で、政府が来年10月に予定されていた
消費税の再増税を延期することを決めたことによって、
今年10月末に実施した追加緩和が間違っていたとは
思わないと述べた。

財政への信認が失われる確率は小さいが、生じた場合の
リスクは大きいとし、持続可能な財政確立への期待を
改めて強調した。

日銀が10月末に踏み切った追加緩和については、
「結果的に増税延期・解散支援になった」
財務省・与党関係者)との見方と「総裁による
増税実施への援護射撃」(増税推進派)との見方が
交錯している。

黒田総裁は、追加緩和はあくまで2%の物価目標を
早期に実現するためだとして、「増税延期で、
追加緩和が間違っていたとか、(緩和時期を)
待つべきだったとは考えない」と述べた。

増税延期の影響に関連し、「財政への信認が失われる
リスクは、実際に起きる確率は非常に低い」が、
そのリスクは「無視できるほど小さいとは
思わない」と指摘。

財政規律が失われれば「公共サービスや所得の
再分配機能、景気の調整機能に障害が生じる」
との懸念を示した。

その上で、「財政規律の重要性は昨日の安倍首相の
会見でも明確に述べられていた」、「政府は
中期財政計画の達成に向けた取り組みを
進めている」とし、「政府が持続可能な
財政構造への取り組みを着実に進めることを
期待する」と繰り返した。

日銀の巨額の国債買い入れが政府の財政規律を
緩めている側面があるが、総裁は「財政規律は
政府・国会の責任で、中央銀行が責任を
取る問題でない」と反論、「日銀に課せられた
課題は2%の物価目標の早期達成だ」と強調した。

日銀が10月31日に公表した「展望リポート」は、
「来年10月の消費増税を前提に作成した」
と改めて説明。

増税延期により、リポートの経済・物価見通しを
変更する可能性については来年4月に公表する
「展望リポート」や1月に予定されている
「中間評価」で議論するとした。

7〜9月の国内総生産GDP)がマイナス成長に
転じた影響についても、来年1月の中間評価などで
議論すると述べた。

前回会合で追加緩和に反対した4人の審議委員のうち、
木内登英委員を除く3人(石田浩二委員、森本宜久委員、
佐藤健裕委員)が今回は賛成に転じた理由について
「短期間で中央銀行が政策を変更すると信認に
かかわるため」と説明した。

物価の先行きについては「原油など一次産品価格の
下落で、消費者物価指数(生産食品・消費税の影響を
除く)が前年比で1%を割る可能性がある」と明言した。

消費者物価指数は当面「現状程度のプラス」を
続けた後、需給ギャップの改善や期待インフレ率の
上昇により「2015年度を中心に2%に達する」とした。

衆院解散によって有権者に問われるアベノミクスは、
第一の矢である金融政策への依存度が高く、安倍首相に
近いリフレ派の識者も、実質金融緩和一本やりで
あることを認めている。

しかし黒田総裁は、「金融政策は成長戦略と比べ機動的、
弾力的に運営されるため、先に効果を上げるのは当然」
とし、「特に第一の矢に依存しているとは思わない」
との見方を示した。