「QE実施に全会一致必要ない」、ECB総裁が反対派けん制

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は4日の
理事会後の記者会見で、ECBは景気支援に向けた
追加措置をとるか、来年初めに決定すると述べた。

また、量的緩和QE)実施の決定には全会一致は
必要ないとの考えを示し、ドイツなどいかなる国の
反対も押し切る姿勢を示した。

ドラギ総裁は、「来年初めに理事会は金融刺激策の
達成度合いや、バランスシートの拡大、物価安定の
見通し、物価動向の見通しについて再評価する」と説明。

ECBはこうした動きに向けた技術的な
準備を加速させていることも明らかにした。

また、「最近の石油価格の動向がユーロ圏の中期的な
インフレトレンドにもたらす広範な影響を見極める」とし、
「低インフレが過度に長引くリスクにさらに対処していく
必要が生じれば、責務の範囲内で追加的な非標準的手段を
活用するとのコミットメントで理事会は引き続き
全会一致している」と述べ、ユーロ圏経済の支援に
向けたECBの決意をあらためて強調した。

ただ、ユーロ圏経済の先行き見通しについて、
向こう数年間の域内総生産(GDP)は3カ月前の
見通しより減少するとの見通しを表明。

「ユーロ圏の景気見通しへのリスクは下向き」とし、
「特にユーロ圏の成長の勢いが弱く、地政学リスクが
高いことから、信頼感及びとりわけ民間投資が
押し下げられる可能性がある」と述べた。

さらに、原油価格の下落に特に
留意する必要があると指摘。

「物価安定の長期にわたる逸脱を、
われわれは容認しない」と言明した。

インフレ率が極めて低い水準で推移すれば、
ECBは国債買い入れ型のQEなどの措置の
実施に踏み切ると見られているが、ドイツは
反対している。

ただドラギ総裁は、「QEは米英で効果を発揮した」とし、
QE実施に全会一致は必要か、それとも賛成多数で
実施できるのか。私自身は全会一致は必要ないと
考えている」と述べ、反対派をけん制した。

ECBはバランスシートの規模について、
前月の理事会で「2012年初頭の水準に
向かうと予想される」と表現したが、今回は
「予想される」を「意図される」に変更。

この変更についてドイツ出身のラウテンシュレーガー
専務理事とバイトマン独連銀総裁が反対していたことが
関係筋の話で明らかになっている。

ドラギ総裁はこの変更について、「単なる予想ではなく、
意図であるということだ」とし、「まだ目標ではないが、
その中間にあたる」と説明。

大多数の理事会メンバーの見解ではあるが、
全会一致ではなかったと述べた。

ECBはこの日に発表したユーロ圏経済に関する
スタッフ予想で、2016年までの域内総生産
GDP)伸び率、インフレ率の見通しを
いずれも大幅に下方修正。

今年のユーロ圏GDP見通しは0.8%とし、
9月予想の0.9%から引き下げた。

2015年は1.0%と9月予想の1.6%、2016年は
1.5%と9月予想の1.9%から下方修正した。

今年のインフレ率見通しは0.5%と9月予想の
0.6%から引き下げ、2015年は0.7%と9月予想の
1.1%、2016年は1.3%と9月予想の1.4%から
下方修正した。

ECBはこの日の理事会で、主要政策金利である
ファイナンス金利を予想どおり0.05%に
据え置くことを決定。

上限金利の限界貸出金利も0.30%に、
下限金利の中銀預金金利もマイナス
0.20%に据え置いた。