円安進行下での輸出低迷、競争力低下や海外生産などが影響=日銀

日銀は26日、円安進行にもかかわらず、
これまで日本の輸出が伸び悩んだ背景として、
情報関連分野の競争力低下や世界的な
設備投資需要の弱さ、海外生産の加速など
構造要因も影響を与えたとの分析リポートを
公表した。

2008年のリーマン・ショック以降、
日本の輸出は総じて低迷を続けてきた。

足元では持ち直しの動きがみられているものの、
2012年末以降に輸出の増加要因である円安が
急速に進行したにもかかわらず、最近まで勢いを
欠いた状態が継続している。

リポートでは、この要因を世界的な貿易量と、
それに占める日本のシェアに分解して分析。

近年の輸出伸び悩みの背景として「世界の貿易量の
伸び悩みがひと頃に比べて鈍化したことに加え、
日本の輸出シェアが低下傾向をたどった」ことを
指摘している。

具体的には、リーマン・ショック前は世界経済の
成長率を上回るペースで拡大してきた世界貿易量が、
リーマン・ショック直後に大きく落ち込んだ後も
成長と同程度のペースにとどまっていると紹介。

金融危機の後遺症による耐久消費財・資本財の
需要停滞や、新興国の技術力向上、原油高に伴う
輸送コストの上昇などで「世界的な貿易量の
伸び悩みが想定以上に長引いている」としている。

一方、リーマン・ショック以降の世界輸出に
占める日本のシェアは、以前の6%程度から、
5%程度に低下。

要因として情報関連分野の競争力低下や、
グローバルな設備投資需要の弱さ、海外生産の
加速をあげている。

情報関連分野については、東アジア各国の
技術的なキャッチアップで日本製品の競争力が
低下したことに加え、リーマン・ショック後の
円高進行で「日本製品の価格競争力も低下した」
と指摘。

もっとも、足元では企業の構造改革や円安の進行に伴い、
日本の情報関連輸出は「東アジアの競合国を上回る
ペースで増加している」という。

また、リーマン・ショック後のグローバルな
設備投資需要の低迷が、資本財を強みとする
日本の輸出を他国よりも下押しした可能性が
あるとしている。

為替円高が進行していた中で、計画決定から一定の
期間を経て、2013年頃から自動車メーカーを中心に
「海外の現地生産拠点が集中的に立ち上がった」ことも
「輸出の構造的な下押し要因」と指摘。

取引先部品メーカーも追随し、「海外拠点向けに増えていた
部品輸出も伸び悩むようになった」という。

もっとも、円安傾向は2年間続いており、足元では
生産拠点の海外移転のペースも鈍化し、国内投資を
高める動きも散見されている。

海外経済が先進国を中心に緩やかに回復する中で、
米国を中心に資本財需要も増加している。

リポートでは「日本の輸出シェアを下押ししてきた
要因にも、変化ないしその兆しは窺われるように
なってきている」とし、先行きの輸出増加には
日本のシェア拡大が重要としている。