物価目標、厳格に考える必要ない=原田日銀委員

26日に就任した日銀の原田泰審議委員(元早大教授)は同日夕、
日銀本店で会見し、2年で2%の物価目標達成を厳格に考える
必要はないと述べるとともに、今すぐ追加金融緩和が必要な
状況ではないとの認識を示した。

一方、「物価が上がらず人々のデフレマインドが
強まるなら、追加緩和も必要」と明言。

財政による景気刺激効果に否定的な考えを示した。

日銀は2013年4月のQQE開始時に「2年で
物価上昇率2%」のスローガンを掲げ、現在も
2015年度を中心とした時期に2%の物価目標を
達成するとの方針を堅持している。

原田氏は物価2%目標を2年程度で実現するとの
日銀の約束について「目標の数字と期間を両方とも
リジッド(厳格)に考えるのは難しいし、考えることは
できないのではないか」と柔軟な姿勢を示した。

物価上昇率2%の実現という「コミットが重要」と
しながらも、原油価格の下落という日本経済に
プラス効果が見込める要因で物価が短期的に
下押しされ、2年程度で物価2%が達成できなくても
「大きな問題とするべきではない」と語った。

原田氏は金融政策運営に関し、国債買い入れ
重要性を主張しているが、この点については
「今すぐ国債を買い、さらなる金融緩和が必要
という意味ではない」と発言。

もっとも、日銀による昨年10月末の追加緩和は
「妥当だった」と評価し、「物価が上がらず、人々の
デフレマインドがさらに強くなることがあれば、
追加緩和も必要」との認識を示した。

追加緩和の具体的な手段については「どういうものを
買った方がいいのか、具体的なオペレーションは
話さない方がいい」としながらも、「株とかREIT
どれだけ買えるかは、ある程度制約はあるのではないか。
ただ、これ以上買えないということではない」と言及。

その上で「量的・質的金融緩和は主として国債
買うこと。量的緩和をすれば必ず国債を買う
ということであり、国債を買い入れること自体が
金融政策だ」とし、追加緩和手段も国債の増額が
主軸との考えを示唆した。

金融緩和の推進によって景気が回復し、「結果的に
財政赤字が減るのは事実」としたが、「減っているから
いくらでも財政を出してもいいわけではない」と強調。

財政出動による景気刺激効果について「わたしは
財政乗数はあまり大きくないのではないかと
考えている」と述べ、金融政策の効果が証明された中で
「金融緩和だけして財政政策をやらないと、財政状況は
良くなる。財政政策で無理やり景気よくする必要性は
低下しているのではないか」と語った。

日銀では、これまで現行3%台半ばに低下している
完全失業率をほぼ完全雇用の状態と説明してきたが、
原田氏は「物価が上がっていない状況で、現在の
失業率を完全雇用と言うことはできない」と主張。

完全雇用状態の失業率は2.5%程度との認識を示した。

潜在成長率についても、デフレが15年も続いた中では
「過去のトレンドで潜在成長率をつくって、それが
潜在成長率だというのは正しくない可能性がある」
と述べた。