経済・物価想定通り、追加緩和必要ない=黒田日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は22日の金融政策決定会合後の
記者会見で、会合では個人消費の改善などを背景に
景気判断を「若干前進させた」と説明。

経済や物価は想定通りに推移しているとして
「現時点で追加緩和が必要とは考えていない」
と明言した。

会合では景気の総括判断について「緩やかな回復を
続けている」とし、従来の「緩やかな回復基調を
続けている」との文言から小幅上方修正した。

理由について黒田総裁は、前日に発表された1〜3月の
実質国内総生産GDP)で個人消費が3四半期連続の
プラスになるなど「個人消費の底堅さが増しているため」
と説明した。

ことし4月から統計上は昨年4月の消費増税の影響が
剥落するため「実質所得は伸びを高めていく」と指摘。

「今後雇用・所得の改善が見通せるため
消費が改善している」との見方も示した。

もっとも、消費増税個人消費に与えた影響については
「駆け込みの反動は終息した」が、「家計の実質所得に
マイナスの影響があるのは間違いない」とし、「影響が
100%なくなったか、もう少し見る必要がある」と述べた。

また「経済が何か激変したということではない」とも述べ、
景気判断の引き上げは小幅な調整に過ぎないとの見解を
にじませた。

金融政策については「(日銀が)考えた線に沿って
経済・物価が動いている」とし、「特別に変わったことに
なるとは思っていない」などと述べた。

同時に「必要あると認めれば躊躇なく政策を調整する」
との公式見解を繰り返し、市場の追加緩和期待を
つなぎとめる姿勢を示した。

仮に追加緩和に踏み切る場合は「その時点で最も
適切なことをする」と述べ、幅広い政策手段を検討する
姿勢をにじませた。

来週末に公表される4月の消費者物価指数(生鮮除く
コアCPI)は、消費増税の影響を除き前年比マイナスの
0.1%に転落する(民間エコノミスト予想の中央値)と
見られており、実際の物価が人々の物価観(予想物価
上昇率)に与える影響の有無が注目されているが、
総裁は「足もとの物価が鈍化している中でも、
各種アンケートなどから見られる予想物価上昇率
下がっていない」と説明した。

一因として、昨年10月の追加緩和が予想物価上昇率
安定に寄与しているとの従来見解を繰り返した。

マイナスにとどまった2014年度の成長率を
下支えするには、早期の追加緩和が必要だったのでは
との質問に対して、「昨年の追加緩和は今のところ
適切だったと思っている」と述べた。

1〜3月のGDPは在庫の伸びの寄与が大きかった点について、
「意図せざる在庫が積みあがっている感じはしない」とし
「これが数値的に成長率を押し上げているのは事実だが、
今後の経済成長にマイナスになることはないと思う」と述べた。

日本の潜在成長力は、日銀試算で0%台前半ないし
半ばにとどまっている点について、リーマンショック後に
資本の寄与がマイナスに転じたのが理由と説明。

今後は設備投資の増加や、女子の就業率上昇などが
貢献することで「遠くない時期に1%に戻る
可能性は高い」と明言した。

また政府が財政再建の前提としている2%成長の実現は
「簡単ではないが不可能でもない」とし、政府の
成長戦略が重要との見解を強調した。

2%の物価目標達成時期については「原油価格動向次第だが、
2016年度の前半」と、4月末に後ずれさせた時期を繰り返した。

「毎月毎月2%の物価を達成するのは不可能」とし、
2%の目標達成とは、平均的に2%の物価上昇率
達成するとの趣旨だと説明した。

日経平均株価が2万円の大台を突破し、東証1部の
時価総額がバブル期並みとなった現状への所見を問われ、
黒田総裁は「株価上昇の背景には過去最高の企業収益が
ある」とし、「現時点で資産市場や金融行動に過度の
期待の強気化は観測されていない」とし、バブルでは
ないとの見解を示した。

債券市場では、今後物価上昇率がなかなか目標の2%に
達することがなく、日銀が現状通り年間80兆円
(日銀の保有残高ベース)の国債買い入れを続けば、
国債が枯渇するとの懸念も根強い。

総裁は「先行きについても、買い入れに支障を
来すとは思ってない」と述べた。