米中通商交渉期待でドル上昇も

今週の為替相場は、米中通商交渉を睨んだ動きが強まるものと思われます。



トランプ米大統領は、これまでこの期限を31日としていましたが、この期限を先送りして、米中の合意を探ろうとしています。



この動きを受けて、為替市場では何らかの合意が得られるのではないかとの楽観的な観測が広がり、ドルが買い戻され、対円で112円台に上昇する動きを見せています。



大きな出来事の前の羅漢的な見方が広がるのは為替市場の常で、直前の米朝首脳会談でも、北朝鮮に対する経済制裁が解かれるとの見方が強まる中で、朝鮮半島の危機に対する楽観的な見方が強まり、ドルを支える要因となりました。



結果は、米朝首脳会談は物別れに終わりました。



将来のことを考えて、友好的な雰囲気なままで会談を終えましたが、次回の会談も決まらないまま、会談を終えたことで、これは会談が「決裂」したということです。



世界もメディアも、米朝首脳会談を見誤っていたわけです。



これと同じことが米中貿易交渉でも起こらないとも限りません。



最も重要な知的財産の部分で、米中の溝は深く、これが大きなネックになるのは間違いないと思います。



それでも、トランプ米大統領は、米中首脳会談で振りまいた楽観論を繰り返し述べているのです。



今、トランプ大統領は、ロシア疑惑問題等々で国内的に大変な苦境にあるわけで、それを隠すためにも外交的には米国が勝利している、トランプ大統領でなければ勝利できなかった、それを宣伝したいのです。



そのために、楽観的な見方を流し、メディアも、国内問題はともかく、外交ではトランプ大統領から流れる情報に踊らされているわけです。



特に、足元の米経済指標の数字が悪化していることは間違いないようです。



時折、堅調な数字が出るのでFRBが懸念するような米経済の停滞はないのではないと考えていたのですが、FRBは事実を一つ一つ重ねて、継続的な利上げを行う状態にないことを納得しているようです。



経済指標が、米経済の底堅さを確認するものにならない限り、今年の利上げはないということになりそうです。



市場は、どうやらその辺を見誤っているようです。



もちろん、市場の大勢が流れる側が、市場で勝利するコツですが、今後発表される経済指標でFRBの懸念が本物か否か、確認するものとなりそうです。



この中で、トランプ大統領が仕掛けている外交ショーでは、その派手な演出に騙されることなく、外交も一つ一つの積み重ねであることを市場が確認すれば、ドルは変えない通貨ということがわかるのかもしれません。



また、米国とともに、欧州でも経済の悪化が意識され始めています。



米国を追いかけて利上げに舵を切っていますが、この判断が正しかったのか否か、今後の経済動向で確認するものと思います。



また、英国の応酬からの離脱問題は、これから佳境に入ると思います。



ユーロや英ポンドの動向が気掛かりになるのはこれからだと思います。



予想レンジは、ドル円108.20113.20円、ユーロ円は124.20129.20円、英ポンド円は144.20159.29円、豪ドル円76.2082.20円。