パウエル米FRB議長、今月利下げへ地ならし 貿易や世界成長懸念

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は10日、下院金融サービス委員会で証言し、貿易摩擦や世界経済の減速による米景気拡大への影響に対処するため「必要に応じて行動する」と述べました。
今月末に開催する米連邦公開市場委員会(FOMC)で約10年ぶりとなる利下げ実施に向けた下地を整えた格好です。
パウエル議長は、貿易摩擦を巡る不透明性が漂う中、「広範な」世界景気の弱含みが米経済見通しに影を落としていると指摘し、先週発表された6月の米雇用統計は底堅い内容となりましたが、欧州やアジアなど、他の主要国の経済指標の低調は続いており、引き続き米国の見通しへの重しになっているとの認識を示しました。
同議長は「製造業、貿易、投資は総じて世界的に低調」とし、米中通商協議が再開したものの「不透明性の払拭には至っていない」と述べています。
同議長は、低水準にある米失業率がインフレを誘発する可能性があるかとの質問に対しては、全般的な物価上昇ペースは引き続き「抑制されており」、賃金も「小幅な」伸びにとどまっていると指摘し、「労働市場が過熱していると判断する確証はない」と応じました。

ドル円は108円台後半で推移

9日の外国為替市場では、ドル円相場は108円台後半でドルが底堅い動きを見せています。



前週発表された6月の米雇用統計が堅調だったことで連邦準備理事会(FRB)が今月の会合で大幅な利下げに踏み切るとの観測が後退した流れから、ドルが買い戻された動きが続いています。



ただ、賃金は緩やかな伸びが続いていることで、今月3031日の米FOMCでは、FF金利0.25%引き下げられるとの見方が依然として強く、ドルの上昇は限定的となっています。



この中、パウエルFRB議長は1011日に議会証言を行う予定で、この中身を注目したいとの声が聞かれています。



ドル円108.75円前後で、ユーロ円は121.95円前後で、英ポンド円は136.05円前後で、豪ドル円75.65円前後で推移しています。

9日の経済指標

【日本】
5月の名目賃金は前年比0.2%減
厚生労働省が9日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報値)は、現金給与総額(名目賃金)が前年比0.2%減の27万5597円でした。
名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は1.0%減で、ともに5カ月連続のマイナスでした。
大型連休の長期化により、パートタイム労働者の給与が減少したことが響きました。

8日の経済指標

【日本】
5月の経常黒字は前年比15.8%減の1兆5948億円
財務省が8日発表した5月の国際収支速報によると、海外とのモノやサービスの取引、投資収益の状況を示す経常収支の黒字額は前年比15.8%減の1兆5948億円となりました。
黒字は59月連続でしたが、中国などアジア向け輸出の減少に伴う貿易収支の赤字幅拡大で、経常収支の黒字幅が縮小しました。
また、貿易収支は6509億円の赤字と前年に比べ赤字幅が3351億円拡大しました。
中国などへの半導体製造装置や自動車部品の輸出が減ったことが響きました。
輸出の減少は6カ月連続で、米中貿易摩擦の激化による中国経済の減速が背景にあるとみられています。 

5月の機械受注は前月比7.8%減と4カ月ぶりマイナス
内閣府が8日発表した5月の機械受注統計によると、企業の設備投資の先行指標となる民間需要(変動の大きい船舶・電力除く)の受注額は前月比7.8%減の8429億円でした。
前月を下回るのは4カ月ぶりとなります。
基調判断は「持ち直しの動きが見られる」に据え置かれました。

6月の景気ウォッチャー調査現状判断指数は44.0に低下
内閣府が8日発表した6月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景況感を示す現状判断指数は、前月比0.1ポイント低下の44.0でした。
悪化は2カ月連続で、基調判断は「このところ回復に弱さが見られる」に据え置かれました。
2~3カ月先の見通しを示す先行き判断指数は、5月調査に比べ0.2ポイント上昇の45.8となりました。 

日銀地域経済報告、全地域で景気判断据え置き
日銀は8日開いた夏の支店長会議で、全国9地域の景気動向を分析した地域経済報告(さくらリポート)をまとめました。
4月の前回と比べ、全地域で景気判断を据え置きました。
ただ、長引く米中貿易摩擦を背景に「海外経済の先行き不透明感の高まりを指摘する声が幾分増えている」と指摘しました。
地域別では、近畿の景気判断に関し、輸出や生産を中心に「一部に弱めの動きが見られる」との表現を追加しましたが、公共投資の増加や堅調な訪日外国人需要が下支えとなったため、引き下げは見送られました。

【ドイツ】
5月の独輸出は前月比1.1%増
ドイツ連邦統計庁が8日発表した5月の貿易統計は、輸出が前月比1.1%増となりました。
4月の輸出は3.4%減少していました。
5月の輸入は前月比0.5%減で、貿易収支は187億ユーロの黒字となりました。
前月は169億ユーロの黒字でした。
同時に発表した5月の鉱工業生産指数は前月比0.3%上昇でした。
前月は2.0%低下でした。

黒田日銀総裁、支店長会議で「景気緩やかに拡大」

日銀は8日、東京・日本橋の本店で支店長会議を開きました。
冒頭のあいさつで黒田総裁は国内景気について、「輸出・生産面に海外経済減速の影響が見られるものの、基調としては緩やかに拡大している」との見方を示しました。
会議では、米中貿易摩擦中国経済の減速で製造業の景況感が悪化する中、各地域の景気の現状や見通しを支店長が報告されました。
午後には全国9地域の情勢をまとめた「地域経済報告」(さくらリポート)が公表されました。
黒田総裁は、景気の先行きについても「基調としては緩やかに拡大を続ける」と述べています。

今週の材料は?

今週も各国で経済指標の発表が目白押しです。



米国では7月のFOMCで利下げが実施されるとの見方が強まっています。



今週はFRB議長の議会証言も控えており、FRBの金融政策に大きな変化が出る可能性があります。



仮に利下げを実施した場合には、年内、あと何回の利下げがあるかに市場の関心が集まると思います。



その意味でも、足元の米経済指標の動向を注目したいと思います。



欧州も、米国の動きを睨んでいる感があり、足元の経済指標の動きを注視する必要があると考えています。

 

日本では

8日】

5月の機械受注(予想前月比4.7%減、前回5.2%増)

5月の国際収支・経常収支(予想13850億円の黒字、前回17074億円)

5月の国際収支・貿易収支(予想7589億円の赤字、前回982億円の赤字)

6月の景気ウオッチャー調査-現状判断DI (予想43.8、前回44.1)

6月の景気ウオッチャー調査-先行き判断DI(予想44.5、前回45.6)



9日】

5月の毎月勤労統計調査-現金給与総額(予想前年比0.8%減、前回0.3%減)

6月のマネーストックM2(予想前年比2.6%、前回2.7)



10日】

6月の国内企業物価指数(予想前月比0.1%低下、前回0.1%低下)



11日】

5月の第三次産業活動指数(予想前月比0.1%低下、前回0.8%上昇)



12日】

5月の鉱工業生産・確報値(前回前月比2.3%上昇)

5月の設備稼働率(前回前月比1.6)



欧州では

8日】

5月の独鉱工業生産(予想前月比0.3%上昇、前回1.9%低下)

5月の独経常収支(予想125億ユーロの黒字、前回226億ユーロの黒字)

5月の独貿易収支(予想170億ユーロの黒字、前回179億ユーロの黒字)



9日】

6月のスイス失業率(予想2.2%、前回2.3)



10日】

5月の仏鉱工業生産指数(予想前月比0.3%上昇、前回0.4%上昇)

5月の英月次国内総生産(予想前月比0.3%増、前回0.4%減)

5月の英鉱工業生産指数(予想前月比1.5%上昇、前回2.7%低下)

5月の英製造業生産指数(予想前月比2.2%上昇、前回3.9%低下)

5月の英商品貿易収支(予想125.50億ポンドの赤字、前回121.13億ポンドの赤字)

5月の英貿易収支(予想32.00億ポンドの赤字、前回27.40億ポンドの赤字) -27.40億ポンド -32.00億ポンド



11日】

6月の独消費者物価指数改定値(予想前月比0.3%上昇、前回0.3%上昇)

6月の仏消費者物価指数改定値(予想前月比0.2%上昇、前回0.2%上昇)

欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨



12日】

6月の独卸売物価指数(前回前月比0.3%上昇)

5月のユーロ圏鉱工業生産(予想前月比0.2%上昇、前回0.5%低下)



米国では

8日】

5月の米消費者信用残高(予想前月比170.0億ドル増、前回175.0億ドル増)



10日】

5月の米卸売在庫(予想前月比0.4%増、前回0.8%増)

5月の米卸売売上高(前回前月比0.4%減)

連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

 

11日】

6月の米消費者物価指数(予想前月比横ばい、前月0.1%上昇)

6月の米消費者物価指数コア(予想前月比0.2%上昇、前回0.1%上昇)

最新週の新規失業保険申請件数(予想22.0万件、前回22.1万件)

6月の米月次財政収支(前回2078億ドルの赤字)



12日】

6月の米卸売物価指数(予想前月比0.1%上昇、前回0.1%上昇)

6月の米卸売物価指数コア(予想前月比0.2%上昇、前回0.2%上昇)



その他では

10日】

カナダ中銀、政策金利発表

5日の経済指標

【日本】
5月の景気判断、「悪化」から「下げ止まり」に上方修正
内閣府が5日発表した5月の景気動向指数速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.1ポイント上昇の103.2となりました。
基調判断は、前月の「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されました。
上方修正は2016年10月以来、2年7カ月ぶりのこと。

5月の家計支出は前年比4.0%増
総務省が5日発表した5月の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は30万901円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年比4.0%増加しました。
プラスは6カ月連続でした。
5月上旬までの10連休の効果で旅行やレジャー関連の支出が増えたほか、前年同月の落ち込み(3.8%減)が大きかった反動で、2015年5月(4.8%増)以来4年ぶりの高い伸び率となりました。
同省では、消費支出の増加が続いているとし、基調判断を「持ち直している」と4カ月ぶりに上方修正しました。
項目別では、宿泊料や交通費、外食代などが伸びました。
5月後半の記録的な暑さで、エアコン購入や飲料、アイスクリームの消費も拡大しました。
10連休が4月下旬に始まり、保険料の支払い分が5月に後ずれした影響も出ました。 

日銀調査、「個人の景況感、4期連続悪化」
日銀が5日発表した6月の「生活意識に関するアンケート調査」によると、1年前と比べ景況感が「良くなった」と答えた割合から「悪くなった」の割合を引いた景況感DIはマイナス25.0となり、前回の3月調査と比べ5.8ポイント悪化しました。
悪化は4期連続で、DIは2016年6月調査(マイナス27.3)以来3年ぶりの低水準でした。
日銀は、中国景気の減速や長期化する米中貿易摩擦の報道が影響したとみています。

【ドイツ】
5月の独鉱工業受注指数は前月比2.2%低下
ドイツ経済省が5日発表した5月の鉱工業受注指数は、前月比2.2%低下となりました。
同省では鉱工業部門の低迷が今後数カ月続く可能性が高いとの見方を示しています。

【フランス】
5月の仏貿易赤字は32.8億ユーロに縮小
フランス税関が5日発表した5月の貿易収支は32.8億ユーロの赤字でした。
4月の改定値は49億ユーロの赤字でした。

【米国】
6月の米雇用統計、新規雇用は22.4万人増
労働省が5日発表した6月の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が22.4万人増と5カ月ぶりに大幅な伸びとなりました。
ただ、4月と5月を合わせた雇用者数は従来から1.1万人下方修正されました。
時間当たり賃金は前月比0.2%(6セント)増となりましたが、前月は0.3%増加していました。
平均週間労働時間は3カ月連続で34.4時間でした。
また、労働市場に参入する人が増える中、0.1%上昇し、3.7%となりました。