米FRB議長、労働市場の停滞「深刻な懸念」

米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は31日、
ワイオミング州ジャクソンホールで講演し、
米経済は「困難な」課題に直面しており、
失業率の低下ペースは遅過ぎるとした上で、
FRBは景気回復を加速させるために
必要に応じて行動すると言明した。

ただ、追加緩和実施に関し
明確なシグナルを示すには至らなかった。

議長は当地で開かれたカンザスシティー連銀主催の
経済シンポジウムで「危機後の金融政策」と題し講演。

追加刺激の費用対効果を見極める必要があるとした上で、
効果が費用を上回る可能性があることを示唆した。

このなかで議長は「代替的な政策措置のコストと
メリットを評価する上で、米国が直面する
経済上の大きな課題を見失うべきではない」と指摘。

その上で「とりわけ労働市場において一段の改善を
達成することが重要」とし、「FRBは政策手段の不透明性
及び限界をしっかりと考慮し、物価安定の責務の下、
景気回復の強化と労働市場の持続的改善の促進させるために
必要であれば、追加緩和政策を実施する」と語った。

追加緩和をめぐる議長の発言は、前週公表された
7月31〜8月1日の連邦公開市場委員会FOMC)議事録で
示された内容と比べ、幾分トーンが弱まった。

議事録では、経済が大幅に改善しない限り「追加金融緩和は
かなり早期に正当化される公算が大きい」との認識が示されていた。

ただ金融市場では、議長発言後もFRBによる量的緩和第3弾
(QE3)実施の可能性をめぐり、期待感が漂った。

バーナンキ議長は現在の経済情勢に満足していないことを
鮮明にするとともに、労働市場を取り巻く厳しい現状を強調。

「雇用市場の停滞はとりわけ深刻な懸念事項だ。非常に困難な
状況をもたらし国民の能力を無駄にするだけでなく、
高止まりしている失業率によって、経済が何年にもわたって
構造的な打撃を受ける可能性があるからだ」と述べた。

バーナンキ議長はまた、FRBによる国債買い入れ
景気押し上げや雇用創出に大きな効果をもたらしたと言明し、
非伝統的な金融政策に伴うリスクは
さほど重視しない姿勢を示した。

議長は「注意深く検討すれば、非伝統的政策のコストは
管理できるようにみえる。これは経済状況によって
正当化されれば、追加的な非伝統的な政策の実施を
排除すべきでないことを示唆している」と語った。

米経済は約3年前のリセッション(景気後退)からは
脱却しているものの、成長は依然控えめな伸びが続いている。

第2・四半期の国内総生産GDP)改定値は
前期比年率で1.7%増で、8.3%と高止まる失業率を
改善させるほど十分とはいえない水準にとどまっている。

議長は「経済が一段と速いペースで拡大しない限り、
失業率は当面の間、最大雇用と一致する水準を大幅に超え
高止まりする公算が大きい」と指摘した。